2007 Fiscal Year Annual Research Report
チタン基形状記憶合金の微細構造と変態温度におよぼす冷却速度の影響
Project/Area Number |
19760461
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松田 光弘 Kumamoto University, 大学院・自然科学研究科, 助教 (80332865)
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Keywords | Ti-Pd合金 / 透過型電子顕微鏡 / 急速凝固薄帯 / 逆位相界面 / 規則度 / HAADF-STEM法 |
Research Abstract |
チタン基形状記憶合金の微細構造と変態温度におよぼす冷却速度の影響について以下の2点について調査・検討した. 1,Ti-Pd合金急速凝固薄帯の作製と透過型電子顕微鏡による微細構造解析 2,Ti-Pd合金バルク材に生成する逆位相界面状(APB-like)組織の微細構造解析 (1)等原子比組成Ti-Pd合金において各種回転速度(2000,3000,4000,5000rpm:周速度約20〜50m/s)の急速凝固薄帯の作製に成功し,DSC測定によりそれらマルテンサイト変態点を調査したところ,冷却速度の増加に伴い変態温度が著しく低下した.組織観察の結果,1)B2規則度の減少,2)短範囲規則相(SRO)の生成,3)ω相の生成が変態点の低下につながったものと結論づけた. (2)同組成のバルク材を作製し透過電子顕微鏡観察したところ,新たにAPB-1ikeな組織が観察された.本合金における構成元素の原子番号差(Z(Ti)=22,Z(Pd)=46)が非常に大きいことから,これら組織を高角度環状暗視野走査透過電子顕微鏡(HAADF-STEM)法に適用した.その結果,原子の種類だけでなく原子の変位も明らかにするなど原子レベルでの解析に成功した.一連の結果から,本合金に生成するAPB-likeな組織は通常観察される積層欠陥ならびに拡散型変態である規則-不規則変態に伴い形成されるAPBとは異なり,マルテンサイト変態時のせん断運動の局所的不均一によって誘起された逆位相界面と考えられる.したがって,新たに変位型変態誘起逆位相界面と定義できる可能性がある. 次年度は引き続き急速凝固薄帯とバルク材を比較しながら,その微細構造変化について明らかにする.
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