Research Abstract |
本年度の研究では, 環境融合プロセスを用いて以下に記載する3項目の結晶育成に注力した。 1. はじめに, ポリスチレン(PS)二次元コロイド結晶をテンプレートにした超音波噴霧熱分解法により, 規則的なハニカム構造をもつタングステン酸ナトリウム(Na_2W_4O_<13>)結晶薄膜を作製することに成功した。PS二次元コロイド結晶テンプレートの作製には, 超親水化したガラス表面を利用した。また, 噴霧条件(特に出発原料種や加熱温度など)を制御することで, ハニカム構造を構成するタングステン酸ナトリウムをアモルファスから結晶面の発達した結晶まで変化させ, 超多孔体構造を形成できた。タングステン酸ナトリウムは, 紫外光照射下で光触媒特性を示すことが知られている。本研究で超多孔質化した結晶薄膜は, 平坦な薄膜に比べ, その特性が向上することがわかった。 2. つぎに, 前年度確立した超はっ水/超親水デザインテンプレートを利用して, ゼラチンや寒天ゲルのライン&スペースを作製し, さまざまなリン酸塩結晶をゲルマトリックス中で育成した。特に, ゲルの内部にリン酸イオンを閉じ込め, 外部からカルシウムイオンを供給することで, 規則的なライン&スペースの水酸アパタイト結晶を育成できた。この水酸アパタイト結晶からなるラインは, 無数のnmオーダーの針状結晶からなり, 個々の針状結晶は自形が発達していた。育成期間や出発原料濃度などの育成条件により, ラインを形成するアパタイト結晶の形状やサイズ, あるいは充填率を制御できた。その他に, アップコンバージョン発光するYbPO_4 : Er結晶なども育成できた。 3. さらに, 上記2の水酸アパタイト結晶をポリマー基板上に育成した。その結果, 高品質な水酸アパタイト結晶をポリマー上に育成でき, 酸性や塩基性タンパク質であるアルブミンやリゾチームに対して, 特異な吸着挙動を示すことがわかった。その結果, 本研究のアパタイト結晶基板をバイオ応用できる可能性を見出した。
|