2008 Fiscal Year Annual Research Report
次世代超伝導線材の応力効果と内部ひずみの直接間接測定によるひずみ特性決定要因解明
Project/Area Number |
19760476
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅野 未知央 Kyoto University, 工学研究科, 助教 (30402960)
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Keywords | YBCO / ひずみ効果 / 温度依存性 / 熱残留ひずみ / ピークひずみ |
Research Abstract |
本年度は、YBCO線材のIc-ひずみ特性における温度の影響に着目して実験を行った。ヘリウムガスフロー方式によりサンプル温度を20〜83Kまで広い範囲で変化させた。自己磁場下における測定においては、20〜60Kでは温度によるIc-ひずみ曲線の違いは小さかった。一方、70K以上では温度の影響が顕著となり、高温ほどひずみの増加に伴うIcの変化が大きくなる傾向が観察された。今回行った測定は引張のひずみ領域のみであったが、各温度で測定されたIC-ひずみ曲線をICが最大となるひずみ(ピークひずみ)と曲線の曲率をフィッティングパラメータとする2次関数で近似することにより、ピークひずみの温度依存性を調べた。その結果、温度の低下とともにピークひずみは圧縮側に移動することが示唆された。このように、引張領域からの外挿で求めたピークひずみの妥当性を実験的に検証するために, 線材をCu合金の板にハンダ付けして4点曲げ試験を実施した。これにより、圧縮ひずみ領域でのひずみ依存性を測定した結果、確かに低温でピークひずみが圧縮側に移動する傾向が確認された。一方、線材の構成要素間の線膨張率の差に起因する熱残留ひずみを複合則に基づいて算出した結果、今回実験を行った温度範囲での熱残留ひずみの変化は非常に小さく、かつ低温ほど圧縮ひずみが大きくなることが示唆された。このことは、もし金属系超伝導線材と同様に熱残留ひずみがIc-ひずみ曲線のピークを決定していると仮定すると、低温ほどピークが引張側に移動することを意味しているが、上記測定結果はそれとは逆の傾向を示している。以上の結果から、YBCO線材におけるIc-ひずみ曲線のピークは熱残留ひずみのみで決定されないことが明らかになった。
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