2008 Fiscal Year Annual Research Report
反跳粒子検出法を用いたラジカル含有フッ素樹脂系イオン交換膜中の水素輸送機構の解明
Project/Area Number |
19760483
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
土屋 文 Tohoku University, 金属材料研究所, 助教 (90302215)
|
Keywords | 高分子電解質 / ラジカル / プロトン伝導度 / 水素輸送 / 反跳粒子出法 |
Research Abstract |
大気および室温において960kGyの線量までガンマ線照射されたパーフルオロスルホン酸系イオン交換高分子膜のプロトン伝導度を直流電気抵抗法を用いて測定した。照射された高分子膜試料の室温におけるプロトン伝導度は約50kGyの線量で未照射のイオン交換高分子膜のプロトン伝導度の約3桁高い値を示し、新規なプロトン伝導機構が生成されることが判明した。しかしながら、プロトン伝導度は50kGy以上において一定の値を保ち、約600kGy以上では高分子膜が破壊されて測定不可能であった。次に、接触計および反跳粒子検出法を用いて照射された高分子膜表面の親水・疎水性の評価および水素濃度分布測定を行った。高分子膜試料表面における水吸収特性は約50kGy以上から急激に向上し、約200kGyから変化しなくなることがわかった。また、表面から約1200nmの深さまでに捕捉された水素濃度は線量の増加と共に増加することも確認した。さらに、親水性を有するラジカル欠陥種が照射量の増加と共に増加するが、プロトン伝導度の線量依存性とは異なることが紫外・可視・赤外光吸収測定によりわかった。 次に、室温および大気において引張試験を行い、線量に対する機械特性の影響について調べた。ヤング率および最大破断応力は線量の増加と共にそれぞれ増加および減少したことから、高分子膜の機械的特性は照射誘起欠陥の生成に伴い劣化することが判明された。従って、50kGy以下におけるプロトン伝導度の増加は、高分子膜表面およびバルク内に生成された親水性のラジカル欠陥種が水の解離速度、プロトン生成量および高分子膜表面からバルク内へのプロトン移動速度を促進させたためと考えられる。50kGy以上では、ラジカル欠陥種量の増加に伴いプロトン生成量も増加するが、高分子膜構造が主鎖部の欠損により維持されなくなり、プロトン移動が阻害されるようになると考えられる。
|
Research Products
(5 results)