2008 Fiscal Year Annual Research Report
ステンレス鋼溶接部の表面組織微細化による特性変化の解明と実用的測定技術の開発
Project/Area Number |
19760502
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Research Institution | Kumamoto Industrial Research Institute |
Principal Investigator |
甲斐 彰 Kumamoto Industrial Research Institute, 生産技術部, 研究員 (20422082)
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Keywords | オーステナイト系ステンレス / ピーニング / 酸化被膜 / 溶接熱影響 / 応力腐食割れ |
Research Abstract |
溶接した種々のオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304、SUS304L、SUS316L)に0.01 s/mmおよび0.11 s/mmの異なる程度のピーニング処理を施し、溶接熱影響部(HAZ)における特性変化についてX線回折および高温水に曝した際の酸化挙動について調査を行った。X線回折では全鋼種においてα-Feの回折ピーク(149°)がピーニングの程度が強くなるに伴い、ピーク強度が低下かつブロード化し、さらにSUS316L以外では加工誘起マルテンサイトに由来する156°のピークが出現するようになった。このことからピーニングにより表面の結晶粒径が変化し.変態が生じたことがわかった。これらの変化は材料の酸化挙動に影響を及ぼすため、高温水中で形成する酸化被膜の組成も変化させており、これをラマン分光分析によりその差異をとらえることができた。全鋼種において未処理材では700cm^<-1>近傍にラマンピークが検出されるが、ピーニングの程度が強くなるに従い、ピークは低波数側にシフトしかつ尖度が増加する。これは酸化被膜を形成する化合物が未処理ではNiFe_2O_4が主体であったのに対し、ピーニングによりFe_3O_4の増加や非化学量論組成のFeの多いNiFe_2O_4が生成したと推定される。高温水における応力腐食割れ(SCC)の感受性が高い加工硬化材などでは本研究で作製した試験片と同様の酸化被膜が検出されていることから、ピーニングによるSCC対策は応力要因に有効であるものの、腐食挙動(酸化)の面からは有効であるとは言えず、今後のプラント等への適用には検討が必要であることが示唆された。
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