Research Abstract |
都市ごみ焼却灰の溶融固化処理において,一定速度で冷却する場合を取り上げ,それが固化体の材料特性に与える影響を検討することを目的として,本年度は,組成選定と模擬試料の作製および一定速度冷却実験を行い,以下の知見を得た。 まず,都市ごみ焼却灰をモデルとして模擬試料を作製した。都市ごみ焼却灰の主成分はSiO_2,CaO,Al_2O_3で構成されており,有害重金属はPbが溶出の可能性が高く,また,実際の溶融処理において溶融温度や流動性の指標とされている塩基度(=(%CaO)/(%SiO_2))は,概ね0.3から1.2の間に点在し,Al_2O_3の割合は10〜30%の間となっていた。したがって,模擬焼却灰の主成分組成はこれらの範囲から代表的な組成を何点か選定し,その他の成分としてNa_2O,K_2O,MgO,Fe_2O_3,PbOを適宜配合させた。所定の組成に配合した模擬試料を,溶融させ急冷することで初期試料とした。作製した模擬試料は種々の粒度に調整し,成分組成,組織等の性状分析を行い,結晶相の無いガラス質であることを確認した。また,JIS-K-0058-1準拠の溶出試験も実施し,粒径が細かいほどPb溶出量が増加する傾向が見られた。これは,Pbの溶出が表面積に依存しているためである。 次に,作製した模擬試料を用いて,種々の冷却速度にて結晶化挙動を調査した。冷却速度が遅い1〜2K/minでは表面から内部まで非常に大きい40μm程度の結晶粒が分布していた。冷却速度が比較的速くなってくると,内部と表層部で結晶粒の大きさにばらつきが見え始め,4K/minでは内部に15μm程度の細かい結晶組織,8K/minに至っては表層部から内部までさらに細かい組織が分布しており,非晶質の部分も残っていた。非晶質部残存の理由として,結晶化が表層部から内部まで進行するのに十分な時間が足りなかったためだと考えられる。
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