2008 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡状態下でのカルシウムフェライト系融体の物性と構造に関する研究
Project/Area Number |
19760522
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
助永 壮平 Kyushu University, 工学研究院, 助教 (20432859)
|
Keywords | 高温融体物性 / 粘度 / 表面張力 / カルシウムフェライト / 焼結鉱 |
Research Abstract |
焼結鉱の焼成プロセスにおける生成融液であるカルシウムフェライト系融体の粘度は, 等温で保持した場合に時間依存性を示すことが報告されている. 本研究では, カルシウムフェライト系融体の物性値(粘度・表面張力)時間依存性について調査し, 物性値を支配している融体構造を明らかにすることを目的とした. CaO・Fe_2O_3を基本組成とし, SiO_2またはAl_2O_3を5mass%添加した融体を測定対象とした. 初年度は, 粘度の時間依存性について, ルツボ回転法により調査を行った. その結果, カルシウムフェライト系融体を等温(1673K, 1773K or 1873K)で保持することにより, いずれの組成においても時間経過にともない粘度が低下し, 粘度が安定するまでに数時間を要することが明らかなった. そこで, 本年度は粘度の時間依存性を支配する融体構造の変化を明らかにすることを中心に研究を進めた. カルシウムフェライトの主成分であるFe_2O_3は両性酸化物であり, 塩基性の融体中においては酸素4配位構造(Fe^<3+>(4))をとり粘度上昇に寄与し, 一方で酸性の融体中においては酸素6配位構造(Fe^<3+>(6))をとり粘度を低下させる働きがあることが知られている. よって, カルシウムフェライト系融体粘度の時間依存性は, Fe^<3+>(4)とFe^<3+>(6)の存在割合の変化による可能性がある. 40CaO-40SiO_2-20Fe_2O_3(mol%)融体を1773K, 大気中に保持した場合, 時間とともにFe^<3+>(4)/Fe^<3+>(6)比が減少するとの報告があったため, 同融体の粘度の時間依存性を同条件で測定した. その結果, 40CaO-40SiO_2-20Fe_2O_3融体の粘度も時間とともに低下し, Fe^<3+>(4)/Fe^<3+>(6)比が安定するまでに要した時間と粘度が安定するまでの時間がほぼ同程度であった. このことは, 40CaO-40SiO_2-20Fe_2O_3融体の粘度の時間依存性が, 両性酸化物であるFe_2O_3の挙動に支配されていることを示しており, 同じくFe_2O_3を含むカルシウムフェライト系融体の粘度の時間依存性についてもFe_2O_3の挙動の変化によるものと考えられる.
|