2007 Fiscal Year Annual Research Report
量子化学計算による不安定物質と金属イオンの反応機構の検討
Project/Area Number |
19760538
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Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health, Japan |
Principal Investigator |
熊崎 美枝子 National Institute of Occupational Safety and Health, Japan, 化学安全研究グループ, 研究員 (70358430)
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Keywords | 量子科学計算 / ヒドロキシルアミン / 化学構造 / プロトン化 / 最安定構造 |
Research Abstract |
本研究の目的は、不安定物質と遷移金属イオンの反応に影響を与える化学構造を把握するため、量子化学計算用プログラムGAUSSIANを用いて分子レベルでの相互作用の様子を調査することを目的としている。本年度ではその準備として、不安定物質としてヒドロキシルアミン(NH20H)を用いて最安定構造を探索すると共に、計算の理論的方法や基底関数を検討した。 計算方法はHartree-Fock法,2次の摂動法,Kohn-Sham密度汎関数法を用い、分子軌道は分極関数を加えたもの、diffuse関数を加えたものを用いてそれぞれ計算し、その結果を比較することとした。またヒドロキミルアミンは水溶液中で弱塩基性を示し一部水素化(NH20H2+あるいはNH30H+)されているため、中性分子のほか水素化されたイオンについて最安定構造を求めた。 最安定構造は中性イオンについてはトランス型(分子内の水素原子がそれぞれもっとも互いに離れている構造)がもっとも安定であった。これは既往の研究によるヒドロキシルアミンの結晶内での構造と一致する。プロトン化されたイオン状態では、分子内にプロトン受容点として窒素と酸素原子が存在するが窒素上に水素イオンが存在する場合に安定である事が分かった。また、いずれのイオンも中性分子よりも安定であることがわかった。仮に酸素上に存在する場合は中性分子よりもエネルギーが低いものの、分子軌道の形が中性の分子軌道と殆ど変わらなかった。とくにHartree-Fock法でも計算結果では、酸素と水素の間に相互作用の存在が認められなかった。以上の検討は、次年度に行う遷移金属との相互作用について検討していくための基礎的知見を得る意義があり、得られた構造はシミュレーションの初期構造として用いるため重要なデータとなる
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