2008 Fiscal Year Annual Research Report
量子化学計算による不安定物質と金属イオンの反応機構の検討
Project/Area Number |
19760538
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Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health, Japan |
Principal Investigator |
熊崎 美枝子 National Institute of Occupational Safety and Health, Japan, 化学安全研究グループ, 研究員 (70358430)
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Keywords | 反応機構 / 金属イオン / 量子化学計算 / 不安定物質 / 分解 |
Research Abstract |
不安定物質は金属との接触で容易に発熱反応する。本研究では、不安定物質の化学構造がどのように反応機構に影響を及ぼすか、を量子化学計算ソフトGaussianを用いて検討した。対象としたのはヒドロキシルアミン(NH20H)と鉄(III)イオンの反応である。水溶液中での反応を模擬するため、通常6配位錯体である鉄(III)イオンに5つの水分子と1つのMI20H分子が配位した構造について構造最適化,エネルギー計算を行った。 計算は3種類の理論的方法(HF,MP2,B3LYP),3種の基底関数(6-31G(d),6-311G(d,p),6-311G+(d,p))を用い、「1.NH20Hが窒素原子で配位した状態」「2.NH20Hが酸素原子で配位した状態」「3.水素原子が窒素へ移動した後(NH30)の酸素原子で配位した状態」について計算を行った。B3LYPでは構造2がうまく収束できなかった。HF法ではエネルギーから見た安定性は1<2<<3であり、MP2法では2<1<<3であった。基底関数による違いは見られず、構造1と構造2の差はHF法で1kcal/mol程度,MP2法で3kcal程度でほとんど違いはなかった。 計算コストの観点から、計算方法にHF法,酸素,窒素,水素の基底関数に6-311G(d,p)(鉄に対してはTZV)を用いて、遷移状態のエネルギーと構造の計算を行った。その結果、NH20Hが分解してアンモニア分子を発生する反応機構が示唆された。これは、NH20Hと鉄イオンを混合するとアンモニアが発生するという実験的事実と合致する。これまで遷移金属を含んだ量子化学計算は行われてきたが、化学物質の分解を含む反応を対象とした点,実験的研究の結果と合致した点で、反応予測手法の確立に貢献するといえる。 この結果は、火薬学会秋季大会で発表する予定である。
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