Research Abstract |
本研究で用いる脱水素酵素系は,多量体構造を有するため,遊離状態では特に低濃度条件下と高温条件下においてサブユニットへの解離が促進され著しく不安定であることがわかった。そこで,四量体構造を有し,活性測定が比較的容易な酸化酵素カタラーゼを用いて,気泡塔バイオリアクターの条件下で機能する多量体酵素系の開発を行った。リポソームにカタラーゼを内包したところ,55℃における酵素活性の保存安定性が遊離酵素系に比べて安定化された。これは,リポソーム内への酵素の濃縮効果と脂質膜との相互作用により酵素のサブユニットへの解離と3次構造の変化による凝集体の形成がともに抑制されるためであった。さらに,外部循環式エアリフト型気泡塔にカタラーゼ内包リポソームを懸濁して,40℃,最大ガス空塔速度を1.9cm/sで操作したところ,直径が約200nm以下のリボソームは,気泡塔内の気液流動場において脂質膜構造が安定であり,リポソーム内の酵素が安定化されることがわかった。これらの知見を基に,アルコール脱水素酵素(ADH)及び補酵素NAD+を共に内包した直径約100nmのリボソームを調製した。その結果,低分子量のNAD^+はリポソーム内に安定に内包された。また,遊離ADH/補酵素系は50℃において凝集体を形成して失活したが,リポソーム内では,脂質膜との相互作用下において熱安定性の高いADH-NAD^+複合体の形成が促進され,酵素活性が著しく安定化されることがわかった。蟻酸脱水素酵素系においても上述のリポソーム内封入による酵素活性の安定化効果がみられた。以上の結果より,リポソーム内に構築された脱水素酵素/補酵素系は酵素の多量体構造が著しく安定化され,酵素活性を持続できる触媒系であることを明らかにした。
|