2008 Fiscal Year Annual Research Report
ベシクルバイオリアクターを利用した効率的タンパク質合成システムの開発
Project/Area Number |
19760559
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Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
黒岩 崇 National Agricultural Research Organization, 食品総合研究所・食品工学研究領域, 契約研究員 (60425551)
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Keywords | バイオリアクター / 酵素反応 / バイオテクノロジー / ベシクル / マイクロバイオプロセス |
Research Abstract |
平成20年度は、酵素を内包したベシクルバイオリアクターを作製し、さらに反応後のベシクルの大量分析・分別回収を可能とする技術の開発を行った。初年度に開発した新規ベシクル作製法"脂質被覆氷滴水和法"により、ベシクルへの酵素α-キモトリプシンの内包を試みた結果、酵素活性を高い割合(>80%)で保持したまま、47%という高い内包率を達成できた。さらに基質をベシクル外から供給して多数(>10^7個/mL)のベシクル内で同時に酵素反応を誘発するシステムを構築して反応実験を行ったところ、ベシクル外水相に酵素反応の阻害剤を添加した場合でも反応が進行した。この結果は、脂質膜透過性を有する基質はベシクル内に入り込み酵素によって加水分解されるのに対し、脂質膜を透過できない阻害剤はベシクル内には入らず酵素に作用しなかったことを示している。従って、ベシクルを反応場として利用することで、内包成分をベシクル外部の阻害因子から保護しつつ、目的の基質は脂質膜を透過して酵素と反応させることができる、といった選択性を有する酵素反応システムを構築できることが示唆された。同様に酵素カルボキシルエステラーゼを内包したベシクルを作製し、フローサイトメトリーにより個々のベシクル内の反応生成物を伺別に評価・回収する技術を開発した。また、内包率のさらなる向上を目指してW/O/W型多相エマルションを基材とした新たなベシクルの作製法を開発した。本法により、親水性の蛍光マーカーであるカルセインに対して、本課題申請時の最終目標であった70%を上回る、80%以上の極めて高い内包率を達成することができた。以上、本研究によりベシクルバイオリアクターの作製とこれを利用した反応、分析評価および生成物回収といった一連のプロセス技術の基礎を構築でき、効率的タンパク質合成システムの確立に向けた有意義な技術的知見を蓄積できた。
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Research Products
(13 results)