Research Abstract |
(1)循環型社会のシミュレーションモデルの構築に関して マルチエージェントを用いて,循環型社会モデルのシミュレーションシステムを構築した。資源循環の対象としては,鉄骨造建築物を想定し,構造部材が社会を流通する設定とした。現状では,新規部材である高炉鋼と,リサイクル部材である電炉鋼が流通しているが,本システムでは解体建物から分別された部材をそのまま転用するリユース鋼材を想定し,流通させた。循環型社会の構成要素としては,ユーザー,建設業者,高炉メーカ,電炉メーカ,リユースメーカ,廃棄物処理業者をエージェントとして設定し,エージェント間を建物,各鋼材が取引されるものとした。また,資源のリサイクル,リユースに影響を及ぼす因子として,建物解体後の部材回収率,リサイクル鋼材製造に係る歩留り,ストックヤードで管理されているリユース部材が,新しい建物に転用可能か否かを決定する適合率などをパラメータとして設定し,CO2排出量,資源採取量削減に及ぼす影響をシミュレーションにより検証した。 (2)シミュレーションの実行及び結果の考察に関して リサイクル鋼材歩留りが1.0の時,完全な循環システム(新規鋼材の製造を要しない)が実現し,CO2排出量はリサイクルが無い場合の約58%まで削減できる。リユース鋼材寿命を建物寿命の3倍強に設定すると,使用される鋼材の約70%はリユース鋼材で賄われ,CO2排出量はリサイクル及びリユースが無い場合の約36%となり,リサイクルを考慮した場合と比べても約62%まで低減可能である。その他,パラメータ相互の関係性やリユースメーカを設置した際に必要となるストックヤードの規模などに関して考察を行った。
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