Research Abstract |
本研究課題の目的は,磁化されたプラズマの流れが引き起こす諸現象,特に磁気流体波(アルフベン波)の安定性に関連した過渡現象および漸近挙動について理論・シミュレーション研究を行うことである.具体的な研究対象としては,近年核融合プラズマ分野で最重要課題の1つとされている抵抗性壁不安定性を取り上げる.漸近接続理論を応用して過渡現象などを解析する統一的な手法を確立することを目的としている.また,確立した手法をトロイダルプラズマに適用すれば,既存の実験やITERプラズマの定量的評価・予測が可能となる. 初年度であった平成19年度は,まず,円柱プラズマを用いた抵抗性壁モードの簡約化モデルを開発し,またそのモデルを用いて解析を行った.なかでも,外的な要因による磁場摂動にプラズマが応答し,磁気島と呼ばれる構造が形成される場合に,どのような定常状態が形成されるかを解析した.プラズマ流が小さい場合は,従来行われていた研究結果が適用できるが,プラズマ流が大きい場合には,流れによって波の周波数がDopplerシフトする効果が無視できなくなる.本研究では,このDopplerシフトの結果生じるAlfven共鳴を考慮して従来の理論を拡張し,どのような大きさの磁気島が形成されるか,またその磁気島がプラズマに与えるトルクはどのようになるかを研究した.その結果,Alfven共鳴効果によって,磁気島の大きさは従来の理論よりも小さくなり,外的な磁場摂動が小さい場合には完全に磁気島を消し去ってしまうことを明らかにした.また,トルクは,従来の理論によればプラズマ回転と共に減少するが,本研究ではプラズマ回転と共に大きくなることを明らかにした.現在,実験結果を説明するためには従来の理論が用いられているが,その見直しを迫る意義をもつ結果である.
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