2007 Fiscal Year Annual Research Report
ポリネーション競争を反映した花粉流動と植物の繁殖様式の進化
Project/Area Number |
19770009
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
亀山 慶晃 Hokkaido University, 大学院・地球環境科学研究院, 博士研究員 (10447047)
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Keywords | 高山生態系 / 種間交雑 / 交雑帯 / 遺伝子流動 / 雪解け傾度 / ツガザクラ属植物 |
Research Abstract |
高山生態系では雪解け時期を反映した連続的な開花現象が認められ、傾度に沿って花粉媒介者や近縁他種との関係が変化する。このような明瞭な季節性は、植物の繁殖様式や花粉流動に大きな影響を及ぼすであろう。本研究の最終目的は、雪解け傾度に沿った花粉流動の量的、質的変化に着目し、植物の繁殖様式の進化過程を分子生態学的視点から解明することである。本年度はその基礎的段階として、ツガザクラ属植物における種間雑種の形成と交雑帯の維持機構に着目して調査を進めた。北海道大雪山系のヒサゴ沼において、雪解け傾度に沿ってA,B,C,Dの4つの調査区を設置し、花形質の測定と遺伝分析(マイクロサテライト、AFLP、葉緑体DNA)をおこなった。その結果、ツガザクラ属植物は親種であるエゾノツガザクラとアオノツガザクラ、雑種第一代であるコエゾツガザクラの大きく3つに区分され、戻し交配種の定着は極めて稀であった。さらに、各分類群の分布は雪解け傾度に沿って変化しており、親種であるエゾは雪解けが最も早い調査区A、アオは雪解けが遅い調査区Dで優占していた。調査区B,Cでは雑種第一代のコエゾが広く分布し、花序数において親種を凌駕していた。さらに、コエゾは数mから15mに達する巨大なクローンを形成しており、非常に長い期間集団を維持し続けていた。このように雑種第一代が優占する交雑帯はF1-dominated hybrid zoenと呼ばれ、世界的にも極めて珍しい現象である。今後は雑種第一代と親種との相互作用に着目して、特に繁殖様式に関する研究を進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)