2008 Fiscal Year Annual Research Report
ポリネーション競争を反映した花粉流動と植物の繁殖様式の進化
Project/Area Number |
19770009
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
亀山 慶晃 Tokyo University of Agriculture, 地域環境科学部, 助教 (10447047)
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Keywords | 高山生態系 / 雪解け傾度 / 交雑帯 / 受粉成功 / 繁殖成功 / 他殖率 |
Research Abstract |
高山生態系では雪解け時期を反映した連続な開花現象が認められ、傾度に沿って花粉媒介者や近縁他種との関係が変化する。このような明瞭な季節性は、植物の繁殖様式や花粉流動に大きな影響を及ぼすと考えられる。昨年度実施した調査によって、北海道大雪山系におけるツガザクラ属植物は親種であるエゾノツガザクラとアオノツガザクラ、雑種第一代であるコエゾヅガザクラの大きく3つに区分ざれ、戻し交配種の定着は極あて稀であるととが判明した。また、コエゾツカザクラは数mから15mに達する巨大なクローンを形成しており、非常に長い期間集団を維持し続けていることが明らかになった。これらの結果に基づき、本年度は親種であるアオノツガザクラの繁殖成功が、雪解け時期やコエゾツガザクラとのポリネーション競争を反映してどのように変化するのかを調査した。アオが受け取る花粉は、他家、自家、ユエゾの3通りである。傾度に沿った繁殖成功度とそれを決定している要因を明らかにするため、自家和合性やコエゾ花粉に対する障壁の強さ、花粉間競争、自然集団における花粉親組成、自殖種子の由来(同花もしくは隣花)を調査した。自家およびコエゾ花粉はともに他家花粉の半分程度の結実率を示したが、同時に受粉させた場合にはほとんどが他殖となり、選択的な他殖メカニズムの存在が示された。それにも関わらす、自然状態では多量の自殖種子が生産されており、マルハナバチによって供給される花粉の大部分が、隣花花粉であることが示された。また、雪解けの早い場所では、マルハナバチの訪花そのものが極めて少ない年が存在した。その場合、自動的な同花受粉によって少数の種子が生産されるものの、強い近交弱勢によって繁殖成功度は著しく低下していた。雪解け傾度に沿ったこのような差異は、生物間相互作用を介した花粉流動の量的、質的変花の重要性を示している。
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Research Products
(3 results)