2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本のミジンコは本当に空を飛んでいるか:DNAデータからの検討
Project/Area Number |
19770010
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧野 渡 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 助教 (90372309)
|
Keywords | 移動分散 / プランクトン / 生活史特性 / ミトコンドリアDNA / 分子生態学 / 日本 |
Research Abstract |
本研究では、1) 知見の乏しい、我が国の淡水産動物プランクトンの遺伝的多様性を評価すると同時に、2) 動物プランクトンの移動分散能力(飛翔能力)はタクサ間の生活史特性の違いに応じて変化する、という従来の「漠然とした理解」を検証すること、を目的とした。研究対象は、日本各地で出現・卓越する広域出現タクサ、すなわち、ミジンコ類・ヒゲナガケンミジンコ類・ケンミジンコ類である。それぞれのタクサについて、ミトコンドリアDNAのCOI領域の部分配列の塩基配列を決定・比較した。またヒゲナガケンミジンコ類とケンミジンコ類については、核DNAのITS領域についても解析を試みた。得られた結果は次のとおりである。1) については、Sinodiaptomus valkanoviというヒゲナガケンミジンコのニュージーランドへの侵入を分子生態学的に確認(Makino, Knox, Duggan, Freshwater Biology, submitted)し、また形態的に識別できない隠蔽種の存在を日本の淡水産動物プランクトンにおいて初めて発見(Makinoand Tanabe, Molecular Ecology, submitted)するなどの成果を得た。今後は、遺伝的多様性の種間差を手がかりとして、我が国の淡水プランクトン相が成立した過程について考察する予定である。2) については、ミトコンドリアDNAのCOI領域の塩基配列データからは、移動分散(=飛翔能力)のタクサ間差が「漠然とした理解(すなわち飛翔能力がミジンコ類>ヒゲナガケンミジンコ類>ケンミジンコ類となる)」と一致する、という当初の仮説を支持する結果は得られなかった。その理由としては様々な要因が挙げられるが、分子進化速度がミジンコ類<ヒゲナガケンミジンコ類=ケンミジンコ類、とタクサ間で異なり、それが解析のノイズとなった可能性が考えられた。
|
Research Products
(2 results)