2008 Fiscal Year Annual Research Report
送粉動物の空間移動様式の変化が植物の花粉分散におよぼす影響
Project/Area Number |
19770011
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大橋 一晴 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 講師 (70400645)
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Keywords | 空間移動様式 / 最適採餌 / 花粉分散 / 父親判定 / 空間学習 / 競争 / 遺伝マーカー / 花の形質進化 |
Research Abstract |
まず前年度にひきつづき、キバナアキギリの父親判定に用いる遺伝マーカーの開発をおこなった。6つの野外集団に由来する株から抽出・精製したDNA試料を用いて既知のサルビア属種との類縁関係を推定したところ、キバナアキギリはアジア産種を含む第三分岐群に属することがわかった。そこで中国産の近縁種Salvia miltiorrhiza(丹参)のDNA配列情報の中から、100bpを越えるマイクロサテライト配列を含む領域を計20箇所ピックアップし、各領域をPCRで増幅するためのプライマーを設計・合成した。これにより、父性解析に必要十分な多型を含むマイクロサテライト遺伝子座を探索する手がかりを得た。 一方、マルハナバチと人工花を用いた室内実験により、餌をめぐる競争が激しいときほど探索型から巡回型への切り替えが適応的になるという先行研究の理論的予測を検証した。その結果、巡回型は探索型よりも競争時に高い採餌成績をおさめること、個体は経験にともない探索型から巡回型へと行動を切り替えるものの、その学習過程は競争者の存在により著しく妨げられることを見いだした(学術論文1, 2 ; 学会発表2, 3, 4)。また、送粉動物のルート巡回行動に関する自身の研究成果を総括し、この行動が植物の繁殖や花の進化におよぼす影響について新たな仮説を提出した(学会発表2 ; 投稿中)。さらにシミュレーション・モデルを用いた解析により、植物集団を訪れる送粉動物の空間移動様式が探索型から巡回型へと変化するとき、集団内の花粉分散が「交配距離」「交配相手の多様性」「他家受粉」の3つの面のいずれにおいても大幅に改善されることを初めて明らかにした(投稿中)。
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Research Products
(6 results)