2009 Fiscal Year Annual Research Report
送粉動物の空間移動様式の変化が植物の花粉分散におよぼす影響
Project/Area Number |
19770011
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大橋 一晴 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 講師 (70400645)
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Keywords | 空間移動様式 / 最適採餌 / 花粉分散 / 父親判定 / 空間学習 / 競争 / 遺伝マーカー / 花の形質進化 |
Research Abstract |
前年度までの成果で、キバナアキギリはアジア産種を含む第三分岐群に属することがわかっている。そこで、中国産の近縁種Salvia miltiorrhiza(丹参)のDNA配列情報を用いて、100bpを越えるマイクロサテライト配列を含む領域をPCRで増幅するためのプライマーを20セット設計・合成した。6つのキバナアキギリ野外集団から集めたDNA試料を用いてこれらのプライマーを試したところ、19セットについてはマイクロサテライト領域をPCR増幅できること、そしてこれらの領域には集団間で多型が見られることを確認できた。以上により、キバナアキギリにおける父性解析や集団間の遺伝解析に利用できるマイクロサテライト遺伝マーカーの開発を完了した。 一方、送粉動物のルート巡回行動に関する自身の研究成果を総括し、この行動が植物の繁殖や花の進化におよぼす影響について新たな仮説を提出した(学術論文1)。また、シミュレーション・モデルを用いた解析により、植物集団を訪れる送粉動物の空間移動様式が探索型から巡回型へと変化するとき、集団内の花粉分散が「交配距離の増加」「交配相手の多様性の増加」「出戻り受粉(自家受粉)の軽減」という3つの利益をもたらすことを明らかにした(学術論文1)。さらに、RFID式人工花システムを開発し、複数個体のマルハナバチを用いた実験を可能にした(学術論文2)。そしてこのシステムを用いた室内実験により、餌をめぐる競争が激しい状況では、情報を利用して頻繁にルートを改変する個体よりも、ルートに固執する個体ほど高い採餌成績をおさめるという理論の予測が正しいことを初めて示した(投稿準備中)。
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Research Products
(3 results)