2008 Fiscal Year Annual Research Report
河川を流下する陸上有機物の代謝過程と流域呼吸の推定
Project/Area Number |
19770013
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
岩田 智也 University of Yamanashi, 大学院・医学工学総合研究部, 准教授 (50362075)
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Keywords | 水系 / 炭素フラックス / 河川食物網 / 流城呼吸 / 陸-川-海相互作用 / 代謝モデル / スパイラルレングス / 土地利用 |
Research Abstract |
本研究は、河川における陸起源有機物の分解速度を測定し、水系が陸から海への炭素輸送に及ぼす影響を評価した。平成20年度は観測地点を増やすとともに、周辺の土地利用(森林・農地・市街地)が水系内の炭素輸送に及ぼす影響を評価した。調査は、富士川水系全体から選定した計44河川(1次〜6次)で河川生物群集の呼吸速度を観測し、さらに呼吸CO_2の炭素安定同位体比を用いて陸上有機物の代謝(分解)速度を測定した。解析の結果、都市・農地を流れる小河川で栄養塩および有機物濃度が高く、陸上有機物の分解速度も森林河川や中大河川に比べてきわめて高いことを明らかにした。また、陸上炭素原子の水底方向への移動速度と平均流下距離を算出したところ、農地・市街地の小河川で効率的に陸上Cが分解されていることが明らかとなった。一方、富士川本流(6次河川)の平均流下距離は100km以上と推定され、本流に入力した陸上有機物の大半は駿河湾へ流出していると考えられた。次に、水系をGIS上で100mグリッドに分割し、スケーリング則で記述した呼吸モデルと物理環境モデルを全グリッドに適用した。これらを用いて夏期における流域代謝速度を推定した結果、陸上Cの分解量は源流域の1・2次河川(ともに、>2 tC basin^<-1>d^<-1>)で最も高く、双方で流域全体(10.3 tC basin^<-1> d^<-1>)の約47%の分解量を担っていた。特に農地・市街地の寄与が大きく、土地利用が流域炭素循環に影響することを明らかにした。本研究により、源流域の小河川が陸上有機物の分解に大きく貢献していること、さらに人間活動が活発な流域で分解量が増加していることを明らかにした。このことから、水系は炭素輸送系ではなく、炭素代謝系として、陸から海洋への炭素輸送に大きく影響していることが定量的に示された。
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