2007 Fiscal Year Annual Research Report
亜熱帯マングローブ林性昆虫の体内時計を使った潮汐サイクルへの適応
Project/Area Number |
19770018
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
佐藤 綾 University of the Ryukyus, 理学部, 助教 (60378560)
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Keywords | 潮汐サイクル / 時間生物学 / マングローブ |
Research Abstract |
生物にとって、環境の変化(一日の昼夜、季節など)を読み取り、それに合わせて活動することは生存上大変重要である。多くの生物が、約24時間周期の体内時計(概日時計)を持っており、一日の昼夜サイクルに活動を合わせている。一方、潮汐は、海辺の重要な環境サイクルである。満潮と干潮は一日二回訪れ(約12.4時間周期)、潮間帯(潮汐の影響を受ける場所)は、満潮になると冠水し、干潮になると地面が露出する。潮汐サイクルは、潮間帯で活動する陸域生物にとって重要な意味を持つが、活動リズムと潮汐サイクルとの関係や、潮汐の変化を読み取るのに体内時計を使っているのか等はあまり調べられていない。 そこで本研究では、亜熱帯や熱帯域の特徴的な潮間帯であるマングローブ林にのみ生息するマングローブスズ(バッタ目)を対象とし、マングローブスズの体内時計の周期や、どのようにして体内時計を使い潮汐に適応しているのか解明することを目的とした。マングローブスズは、干潮時に地表面で活動し、満潮時には幹の上などで休止しているのが観察される。 まず、野外より採集した個体を恒常条件下(全暗・25℃)で飼育し、その活動量を24日間記録、解析した。その結果、約12.6時間の自由継続リズムを示すことが分かり、潮汐に合わせた体内時計を持っていることが明らかとなった。また、明暗条件下(12L12D・25℃)に移しても、恒常条件下で示していた概潮汐リズムに変化が見られず、光は同調因子として働かないことが分かった。昆虫において、概日時計とは明確に異なる概潮汐時計の存在を示した初めての研究であり、本研究成果の意義は大きい。今後は、概潮汐時計を使ってどのように潮汐サイクルに同調しているのか明らかにしていく。
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