2008 Fiscal Year Annual Research Report
亜熱帯マングローブ林性昆虫の体内時計を使った潮汐サイクルへの適応
Project/Area Number |
19770018
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
佐藤 綾 University of the Ryukyus, 理学部, 助教 (60378560)
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Keywords | 潮汐サイクル / 時間生物学 / マングローブ |
Research Abstract |
本研究は、潮汐の影響を受けるマングローブ林の林床にのみ生息するマングローブスズ(バッタ目)を対象とし、マングローブスズのもつ活動リズムと、その同調因子の解明を目的としている。前年度の研究成果より、マングローブスズが約12.6時間周期の概潮汐リズムを示すことが明らかとなっている。そこで今年度は、水刺激に注目しマングローブスズのもつ概潮汐リズムの同調機構の解明を目的とした。 水刺激を与えることのできる活動記録装置を作成し、野外から雄成虫を採集して実験に供した。まず恒暗条件下(25℃)で活動リズムを8〜12日間記録してから、30分の水刺激(浸水)を12.4時間ごとに4回与え、その後再び恒暗条件下(25℃)で活動リズムを7〜10日間記録した。その結果、水刺激を与えた位相によって活動リズムの変位の方向と大きさが異なっていた。例えば、活動相の前半に水刺激を与えた場合、活動リズムは大きな位相後退を示し、活動相の後半に与えると、活動リズムは大きな位相前進を示した。一方で、活動相の真ん中や、休息期に水刺激を与えても、活動リズムは大きな位相変位を示さなかった。これらの反応を位相反応曲線としてまとめると、その形は光刺激に対する概日リズムの位相反応曲線と似ていた。これらのことから、マングローブスズは水刺激(上げ潮への接触)を同調因子として概潮汐リズムを野外の潮汐サイクルに合わせており、この体内時計は概日時計に似た性質を持っていることが明らかとなった。今後の課題としては、野外の潮汐サイクルに同調させた個体とさせなかった個体の野外での死亡率の差を求めるなどして、概潮汐時計の適応的意義を検証することが挙げられる。
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