2007 Fiscal Year Annual Research Report
チベット高原における高山植物の環境適応に関わる集団間の遺伝的分化の解明
Project/Area Number |
19770020
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
下野 綾子 National Institute for Environmental Studies, 生物圏環境研究領域, NIESポスドクフェロー (30401194)
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Keywords | 適応的遺伝子 / 遺伝的分化 / EST / チベット高原 / 高山植物 / Potentilla |
Research Abstract |
野生生物の集団間の遺伝的分化における選択圧の寄与を明らかにすることを目的とし,適応的遺伝子に関わるゲノム領域と,関わらない中立なゲノム領域の変異を比較する。今年度は,中立な領域を調べ、集団の遺伝構造や過去の来歴について明らかにした。チベット高原において標高という環境勾配に着目し,幅広い標高に分布するPotentilla saundersiana RoyleとP. fruticosa L. (バラ科キジムシロ属)を対象とした。標高の高い高原中央部から標高の低くなる北東部にわたる23集団よりサンプリングした。葉緑体DNAのmatK領域の塩基配列を決定し,33個のハプロタイプを見出した。分岐年代の古いハプロタイプは高原中央部の集団のみに見られ,北東部集団には分岐年代の新しい共通したハプロタイプが優先していた。また北東部より中央部の遺伝的多様性が高かった。このことは高標高域の集団の起源が古く、遺伝的変異が蓄積していることを示唆している。 適応的遺伝子に関わるゲノム領域を調べるマーカーの開発には,Potentillaに近縁なイチゴの発現遺伝子の塩基配列(EST)情報を利用した。データベースより情報を取得し,シロイヌナズナの塩基配列とアライメントし,相同性の高い領域にプライマーを作成した。作成したプライマーでP. saundersianaでは約30%,P. fruticosaでは約60%の遺伝子の増幅が可能であった。増幅率の違いは系統関係の近さを反映していると考えられる。今後は増幅可能なプライマーを用いて集団内および集団間の変異を探索する。モデル生物の塩基配列情報を利用することで,本来ESTを得るのに必要な作業(mRNAを抽出しcDNAライブラリーの構築を行う)にかかる時間とコストを節約できると考えられる。
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Research Products
(1 results)