2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19770025
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
粟井 光一郎 Saitama University, 大学院・理工学研究科, 助教 (80431732)
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Keywords | チラコイド膜 / 葉緑体 / ガラクト脂質 / 糖転移酵素 / リン酸欠乏 / シアノバクテリア / 比較ゲノム解析 / 光合成 |
Research Abstract |
光合成反応の場であるチラコイド膜を構成する脂質の組成は、酸素を発生する光合成生物で非常によく保存されており、多量のガラクト脂質を含むことが知られている。しかし、何故チラコイド膜に多量のガラクト脂質が存在するのか、現在のところわかっていない。植物葉緑体およびその進化的な祖先であるシアノバクテリアの光合成膜には、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)という糖脂質が30%近く含まれ、両者でDGDG生合成経路は共通であると考えられてきた。ところが、すでに単離されている植物のDGDG合成酵素遺伝子DGD1の相同遺伝子は、シアノバクテリアのゲノムには見あたらない。そこで、シアノバクテリアには植物とはタイプの異なるDGDG合成遺伝子が存在すると予想し、糖転移酵素の活性モチーフ検索を主な手法として、シアノバクテリアのDGDG合成酵素遺伝子dgdAを単離することに成功した。dgdA遺伝子は、単細胞性紅藻類には存在するが、緑藻類や高等植物には存在しない。従って、DGDG生合成のしくみは、ラン藻類から緑藻類へ移行する過程のどこかで大きな変革に遭遇したと考えられる。dgdA遺伝子が単離されたことにより、その遺伝子を破壊する実験が可能になった。dgdA遺伝子の破壊では、シアノバクテリアは無機栄養塩が供給される限り大きな問題なく生育することがわかった。このことは、植物のDGDG合成酵素遺伝子破壊株dgd1が極度に矮化することと対照的である。一方、dgdA破壊株をリン酸欠乏培地で培養すると、生育に遅れが見られた。このことは、リン酸塩の欠乏した自然環境では、dgdA遺伝子はシアノバクテリアの生育によりよい効果をもたらすと考えられる。今後は、より多くのシアノバクテリアの株を用いて、今回観察された結果を検証する予定である。
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