2008 Fiscal Year Annual Research Report
εサブユニットによる葉緑体型ATP合成酵素の活性調節機構
Project/Area Number |
19770027
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
紺野 宏記 Tokyo Institute of Technology, 資源化学研究所, 助教 (80419267)
|
Keywords | ATP合成酵素 / 葉緑体 / 活性調節 |
Research Abstract |
キメラεによるATP合成酵素の活性制御 シアノバクテリアF_1のεのC末端部分を好熱性細菌PS3由来に改変したキメラεを作成し、本来の活性制御を失った場合、F_1およびF_0F_1の活性がどのように変わるか調べた。その結果、キメラεはF_1に結合しにくいが、いったん結合すると阻害の程度はシアノバクテリアεと変わらないことがわかった。好熱性細菌PS3のεにATPが結合すると非阻害型の構造をとるにもかかわらず、キメラεはシアノバクテリアF_1のATP加水分解活性を阻害したことから、シアノバクテリアF_1にみられる強いε阻害にはε以外の要因も重要であることがわかった。シアノバクテリアおよび葉緑体(chloroplast-type)のγサブユニットには他種のγが持っていない数十アミノ酸長からなる挿入配列が存在し、この挿入配列を削除するとε阻害が低下する。すなわち、chloroplast-type F_1にみられる強いε阻害はεへのATP結合とは関係なしにγ上の挿入配列によってεが非阻害型の構造をとりにくいことによると示唆できる。 εのC末端ヘリックスの重要性の生理学的検証 εサブユニットのC末端ヘリックスを削除したATP合成酵素を含む形質転換株からチラコイド膜を調製し、そのATP加水分解活性を野生株と比較した。その結果、εのC末端ヘリックスが欠失したATP合成酵素は野生型よりも高いATP加水分解活性を示すことがわかった。現在、形質転換株の増殖能や暗所下における細胞内ATP量を野生株と比較している。 植物やシアノバクテリアは光の当たらない夜間にATP合成の逆反応であるATP加水分解を効率よく阻害しなければならない。平成20年度の結果は、その阻害機構の解明に重要な知見を与えた。またシアノバクテリア形質転換体を用いF_0F_1におけるεのC末端部分の生理学的重要性も明らかにしつつある。
|