2008 Fiscal Year Annual Research Report
マウス亜種間の生殖隔離に関わる遺伝子群の同定と生殖隔離の遺伝的メカニズムの解明
Project/Area Number |
19770070
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Research Institution | Transdisciplinary Research Integration Center |
Principal Investigator |
木曽 彩子 (岡 彩子) Transdisciplinary Research Integration Center, 新領域融合研究センター, 融合プロジェクト特任研究員 (80425834)
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Keywords | 生殖隔離 / X染色体 / コンソミック / 種分化 / マウス |
Research Abstract |
今から約100万年前に分岐したとされるマウス亜種のMus musculus domesticusとM. m. musculusの間に形成された生殖隔離の遺伝的基盤を明らかにするため研究を行った。実際には、これらの亜種間の生殖隔離を反映しオスで生殖能力が欠失するコンソミック系統B6-ChrX^<MSM>を用い、原因遺伝子群の探索と遺伝子機能を知るための詳細な表現型解析を行った。以前の解析から、X染色体に連鎖した原因遺伝子は、単一ではなく複数存在することが示唆されていたが、X染色体のテロメア側とセントロメア側の二つの領域で独立にQTL解析を行ったところ、二カ所の比較的短い領域にQTLを絞り込むことに成功した。これらの候補領域は、数種類の遺伝子が増幅してクラスターを形成している領域で、しかも精子形成期に高く発現する遺伝子が集中していることから、特定の染色体領域の発現調節が系統間で異なることが生殖隔離に関係している可能性が示された。また、B6-ChrX^<MSM>の表現型解析から、精子形成の減数分裂期において、細胞周期の二カ所のチェックポイント、すなわちDNA合成期への移行時(GI/Sチェックポイント)と第一減数分裂中期への移行時(パキテンチェックポイント)に、細胞周期の抑止が顕著におこっていることが明らかになった。そこで、様々な系統を用いて生殖隔離を起こしたF1個体を作製し、同様の解析を行ったところ、上記のチェックポイントに加えさらに第一減数分裂中期から後期への移行時(スピンドルチェックポイント)でも細胞周期の抑止を起こす個体が認められた。以上の結果から、異なる系統由来のゲノムが混じったことによって生じた遺伝子発現の揺らぎや遺伝子多型などは、減数分裂期の3箇所のチェックポイントでモニタリングされ、異常が見られた場合にはすぐに細胞周期の抑止が引き起こされると考えられた。チェックポイント機構は、メスよりオスでより厳密に働いていることが知られており、哺乳類において生殖隔離がオスに早くあらわれることと関連している可能性がある。
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