2008 Fiscal Year Annual Research Report
分子量1300万ダルトンの巨大粒子ボルトの立体構造決定
Project/Area Number |
19770082
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 秀明 Osaka University, 蛋白質研究所, 助教 (40346169)
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Keywords | vault / 核酸-蛋白質複合体 / X線結晶構造解析 / 自然免疫反応 / 脂質ラフト / 生体超分子複合体 / SPring-8 / BL44XU |
Research Abstract |
ボルト(vault)は1986年に来国UCLAのL. H. Romeらによって発見された巨大な粒子である。本粒子は3種類の蛋白質と1種類のRNAで構成され、分子量は約1000万、粒子長軸の長さが約700A、胴体部分の最大直径が約400Aで、細胞質内に存在する最大の分子量を持つ蛋白質-核酸複合体粒子である。樽型をした粒子の外殻はMVP(Major Vault Protein)の多量体によって構成され、他の成分は粒子内部に存在している。本粒子については、これまで様々な役割が報告されているが、粒子の発見から20年以上を経た現在もなお、本質的な機能は解明されていない。よって、本研究では、vaultの全体構造決定を機能解明へのbreakthroughにするため、ボルト粒子全体のX線結晶構造解析に着手した。そして、2008年に3.5A分解能でボルト外殻の全立体構造決定に成功した。構造情報からは、機能解明に繋がる非常に興味深い事実が明らかになってきた。粒子外殻を形成する蛋白質であるMVPの12個あるドメイン構造のうちの1つが、脂質ラフトへの結合に重要であると言われるストマチンと類似の構造を持つことが分かったのである。この事実は、2007年に米国・Harvard大学の研究グループによって報告された「ボルトの自然免疫反応への関与」を強力に支持するものであった。彼らは、緑膿菌が肺上皮細胞に感染する際、肺上皮細胞の脂質ラフトにボルトが急速に集まることで、緑膿菌の内部移行が促進され、自然免疫反応への受け渡しがスムーズにわれて免疫抵抗性が高まるという現象を発見したのである。現段階では、ボルトの本質的な機能は解明されていないが、本研究によりボルトが脂質ラフトに結合する可能性を示せたことで、これまで散漫気味であった機能解明の研究において1つのしっかりとした方向性を示すことができた。
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Research Products
(7 results)