2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヘム型二原子酸素添加酵素の反応中間体解析による酸素活性化の化学原理の解明
Project/Area Number |
19770094
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
杉本 宏 The Institute of Physical and Chemical Research, 城生体金属科学研究室, 研究員 (90344043)
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Keywords | 構造生物学 / ヘムタンパク質 / 共鳴ラマン分光 |
Research Abstract |
2つのヘム型の二原子酸素添加酵素の反応メカニズムの解析について下記の成果を得た。 (1) 嫌気条件下で酸化型ヒトトリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO)に対して基質トリプトファンのタイトレーションを行い、共鳴ラマン分光法を用いて基質結合にともなう補酵素ヘムの構造変化の解析を行った。スペクトル解析の結果、基質の結合によりピロール環のティルトモードやビニル基のベンドモードの強度に顕著な変化が観測された。これらの振動モードのピーク面積を基質濃度に対してプロットすると、いずれにおいてもシグモイド型の曲線が得られ、TDOの基質結合にはホモトロピックな協同性があることを初めて見いだした。また、変異体の酵素活性および分光測定から、この協同性の発揮にはTyr42が深く関与していることを明らかにした。 (2) TDOのN末端の15残基を削除する変異体を用いることで結晶化に成功し、8Å分解能のX線回折データを得た。 (3) 我々が提唱しているインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)の反応スキームをDFT法を用いて理論計算を行った結果、当初予想されていた基質N1原子からのプロトン引き抜きよりも、Fe(II) に結合した酸素のイシドールC2あるいはC3位への直接電子付加による反応が示唆された。さらにCriegee-typeの再配置による反応の進行よりもdioxitane中間体のぽうがエネルギー的に有利であることが示された。 (4) 抗がん剤候補化合物となりうるIDOの新規阻害剤の合成に成功した。さらに、阻害剤結合型であると期待される結晶を調整したが、回折分解能が乏しいために解析は不可能であった。 (5) 共鳴ラマン分光法によりIDOの反応中間体のFe-O結合の振動モードの検出に成功した。
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