2007 Fiscal Year Annual Research Report
速度論および構造解析に基づく酵素触媒反応におけるプロトントンネリング機構の解明
Project/Area Number |
19770118
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
村川 武志 Osaka Medical College, 医学部, 助教 (90445990)
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Keywords | プロトントンネリング / ビルトイン補酵素 / トパキノン |
Research Abstract |
本研究は銅含有アミン酸化酵素(AO)について,詳細な速度解析と構造解析から得られる知見とを組み合わせ,酵素触媒機構におけるプロトントンネリングのメカニズムを解明することを目指す.本年度は,AOの反応阻害剤であるヒドラジンを用い,その複合体構造から反応中間体モデルを形成する上での初期構造を得ることを試みた. 3種類のヒドラジン誘導体,ベンジルヒドラジン(BH),4-ヒドロキシベンジルヒドラジン(4HBH),及びフェニルヒドラジン(PH)について,AOとの複合体の結晶を調製した.結晶顕微分光及び回折データを解析した結果,得られた阻害剤複合体が基質シッフ塩基中間体に類似したヒドラゾン型であることが判明した.また,プロトン引き抜きに関与する触媒塩基Asp298の側鎖カルボキシル基の酸素原子と複合体ヒドラゾンのN2原子(基質アミンでのCαに相当する)の距離は,PHは,BHおよび4HBHに比べ約2倍であった.これらの阻害剤に対応するアミン基質について,前定常状態の速度解析を行った結果,プロトン引き抜き過程において,PHに対応するベンジルアミンの速度定数は,BHおよび4HBHに対応するフェニルエチルアミンおよびチラミンに比べ,約1/1000の値を示し,ヒドラジン複合体構造におけるAsp298の位置は,対応するアミンの反応性の違いをよく説明できるのではないかと考えられた. 本年度の研究により,詳細な反応中間体モデルを形成する上での初期構造を得ることが出来た.また,ヒドラジンに対応するアミン基質についての速度解析は,触媒塩基とプロトンとの距離がプロトントンネリングに大きく影響を与えるという結果と一致するものであった.
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