2008 Fiscal Year Annual Research Report
速度論および構造解析に基づく酵素触媒反応におけるプロトントンネリング機構の解明
Project/Area Number |
19770118
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
村川 武志 Osaka Medical College, 医学部, 助教 (90445990)
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Keywords | プロトントンネリング / ビルトイン補酵素 / トパキノン |
Research Abstract |
本研究は土壌細菌由来銅含有アミン酸化酵素(AGAO)について, 詳細な速度解析と構造解析から得られる知見とを組み合わせ, 酵素触媒機構におけるプロトントンネリングのメカニズムを解明することを目指す. 本年度は, プロトントンネリングが観察される, 触媒塩基によるαプロトンの引き抜き過程(基質-シッフ塩基中間体(SSB)から生成物-シッフ塩基中間体への変換過程)について, 詳細な解析を試みた. 基質アミンのα位炭素には2個のプロキラル水素が存在するが, このプロトン引き抜きの立体選択性は酵素の起源や基質ごとに大きく異なる. 以前の研究において, 我々はAGAOを含むアミン酸化酵素では, 基質アミンの遠位部分と酵素との結合様式によりプロトン引き抜きの立体選択性が決定されるのではないかと推定した. そこで引き続きこの仮説の正当性を検証するため, 遠位部分がほとんどないエチルアミンの2個のα水素を立体特異的に重水素化し, AGAOによるα水素引き抜きの立体選択性を解析した. その結果, フェニルエチルアミンやチラミンなど大きな遠位部分をもつ基質の反応においては, α水素の引き抜きがいずれも99%以上の高い立体選択性でpro-S水素特異的に進行するのに対し, エチルアミンではpro-S水素選択性が86%にまで大きく低下した. また, エチルアミンとの反応中間体(SSB)のX線結晶構造解析では, SSBに相当する部分の電子密度が非常に低く, コンフォメーションが一定でないことが示唆された. 以上の結果より, アミン酸化酵素によるα水素の引き抜きの立体選択性はSSBのコンフォメーションにより一義的に決定される, という仮説の正当性が確かめられた.
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