2009 Fiscal Year Annual Research Report
速度論および構造解析に基づく酵素触媒反応におけるプロトントンネリング機構の解明
Project/Area Number |
19770118
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
村川 武志 Osaka Medical College, 医学部, 助教 (90445990)
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Keywords | プロトントンネリング / ビルトイン補酵素 / トパキノン |
Research Abstract |
量子論的現象であるプロトントンネリングは,C-H結合の開裂など,プロトン移動を伴う反応において,酵素がもつ新たな反応促進メカニズムのひとつとして受け入れられつつある.以前我々は,土壌細菌Arthrobacter globiformis由来の銅アミン酸化酵素(AGAO)の反応機構を詳細に解析することにより,プロトントンネリングが基質によって異なるモードで進行していること,さらにその違いが基質の活性中心への結合様式の僅かな差に起因していることを明らかにした.本年度は,プロトントンネリングについてより厳密にエネルギー論的に取り扱うことを目的とし,AGAOを用いて,幅広いpH領域での遷移相の反応速度解析を行い,反応軸,または各中間体のプロトン数軸方向での相対的なエネルギー準位の決定を試みた. 以前の定常状態での速度解析の結果に基づき,pH5.5~10の範囲で,フェニルエチルアミン(PEA)を基質とするストップトフロー実験を行った.得られたスペクトル変化をglobal解析することにより各素過程での速度定数を算出し,これらの値をpHに対してプロットすることにより各素過程に関与する解離基のpK_aを求めた.さらに結晶中に基質をソーキングすることにより,反応中間体の結晶構造を決定した.速度論,および,結晶構造から得られたデータにより,以前プロトン引き抜きの触媒塩基と同定されたAsp残基が,多くの他の素過程にも関与していることが明らかにされた.現在は,各中間体でのプロトン化状態を推定するとともに,プロトン数における相対的なエネルギー準位の決定を試みている.
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