2008 Fiscal Year Annual Research Report
NMRによるアミロイド線維の成長末端中間体の構造解析
Project/Area Number |
19770131
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
櫻井 一正 Osaka University, たんぱく質研究所, 助教 (10403015)
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Keywords | アミロイド線 / NMR / 重水素交換 / フォールディング |
Research Abstract |
本研究の目的はβ2ミクログロリン(β2m)アミロイド線維の末端中間体の構造の知見を、パルスラベル重水素交換実験の結果から得ることである。19年度には蛍光実験に加え、パルスラベルなしの重水素交換実験を行い、線維末端中間体が存在することを示唆する結果を得た。しかし、データ解析の結果、線維末端中間体の保護部位を決定したものの結果に不明瞭な部分があったため、より高い時間分解能の実験が必要となった。そこで、20年度は当初の予定に含まれていたパルスラベル実験を行った。 20年度にはパルスラベル実験の他に、モノマーと線維共存下における重水素交換実験や、アミロイド線維の直接スペクトル観察などの実験も行った。これらの結果を総合すると以下のような反応過程が提案された。まず、伸長した線維内では、モノマーβ2mの中央部全体が線維の内部に取り込まれており、N末端とC末端のみが線維の表面に露出している。しかし、過渡的に形成する線維末端中間体においては、N末端やC末端も線末端β2m分子と相互作用していることが分かった。これらの結果から、モノマーβ2mが線維と相互作用する際、非特異的な相互作用の形成を繰り返すうちに、線維伸長に繋がる相互作用を形成し、そういった結合種のみが最終的な線維の形態に変化していくものと考えられる。 今回の実験から、研究の途上ではあるが興味深い結果を得ることができた。まずは、今回の基本的な理解の報告を科学雑誌に投稿したいと考えている。そして今後は、今回得られた線維伸長機構に更に新たな実験結果を加え、モデルを詳細にしていきたいと思っている。
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