2008 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素応答に関わる細胞内情報伝達の細胞外環境依存的な制御機構の解析
Project/Area Number |
19770158
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鳥居 暁 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 助教 (10444001)
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Keywords | 低酸素 / 転写調節 / HIF-1 / ストレス |
Research Abstract |
細胞の低酸素応答においてHIF-1alphaとそのファミリー分子が重要な基本因子であることが明らかにされている。前年度までの研究において、ラットの副腎髄質クロム親和性細胞であるPC12細胞を異なる培地で培養すると低酸素応答に差が生じ、この現象にはHIF-1転写活性化経路の抑制因子であるIPASの低マグネシウム時の発現誘導が重要な要素であることがわかった。今年度の研究で、PC12細胞を用いた実験から、このマグネシウムの要求性は活性酸素を引き起こすようなコバルトや間欠的低酸素の曝露時にだけ見られ、恒常的低酸素曝露時には起こらないことがわかった。低マグネシウム血症のマウスにおいても、コバルトや間欠的低酸素依存的な副腎や血管内の酸素センサーとしての機能を持つ頸動脈小体におけるHIF-1の標的であるチロシン水酸化酵素の発現誘導が欠如することがわかった。低マグネシウム血症時にこれらの組織の活性化が起きないことは、循環機能に負担をかけ心臓疾患などの発病原因になる可能性が考えられる。さらにマグネシウムが様々なカルシウムチャネルの阻害剤として機能する点に着目して、IPAS遺伝子の発現活性化メカニズムの解析を行った。その結果、コバルトによって活性化されたPI3キナーゼ経路と低マグネシウムによって抑制を解除されたカルシウムチャンネルより活性化された細胞内カルシウム経路の両方が引き金となってNF-kappaBを経由してIPASの発現誘導が引き起こされることがわかった。IPASのような抑制因子の発現機構や活性化機構の解明は、細胞の低酸素応答機構の研究の発展に貢献すると考えられる。
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