2007 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ視覚中枢特異的に発現する因子の解析
Project/Area Number |
19770190
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 章子 The University of Tokyo, 分子細胞生物学研究所, 助教 (70372430)
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Keywords | ショウジョウバエ / 視覚中枢 / 神経発生 |
Research Abstract |
本研究で利用した実験系であるショウジョウバエ脳視覚中枢の形成過程では、3令幼虫後期に分化した視神経が順次脳に投射し、それによってラミナ神経の分化が引き起こされる.R1-6と呼ばれる視神経はラミナの底部で伸張を停止する.これと同時に、ラミナ底部には後方からグリア細胞が移動し、視神経とラミナ神経とともに特異的な構造を形成する.R7、8はより深部のメダラに投射し、特定の位置で停止する.この過程には視神経の投射の制御、ラミナ神経の分化の制御、ラミナの形態形成の制御、グリア細胞の分化・移動の制御など様々な過程が関わっていると考えられる.本研究ではエンハンサートラップ法により視覚中枢特異的に発現する遺伝子を単離・解析することで、この機構の解明を目指した.その結果、視覚中枢のラミナ神経に特異的に発現する系統が2つ得られた(0047、98a).それぞれのトラップベクターの挿入位置を決定した結果、0047はNeu3と呼ばれるメタロプロテアーゼをコードする遺伝子の近傍に、98aに関してはptp61Fと呼ばれるチロシン脱リン酸化酵素をコードする遺伝子の近傍に挿入が確認された.ptp61Fには核、細胞質局在型と膜結合型のアイソフォームが存在する.視覚中枢でそれぞれのアイソフォームを強制発現すると、膜結合型アイソフォームを過剰発現させた場合のみ機能欠失変異体と同様の表現系がみられること、また予備的な実験結果であるが、ptp61Fの表現系は核移行型のアイソフォームのみを発現させることでレスキューでき、一方で膜型のアイソフォームの強制発現ではレスキューできないことを示唆する結果を得た.この結果は、invivoでは核移行型のアイソフォームが重要であることを示唆している.Neu3に関しては、機能欠失変異体の解析をおこなった結果、視覚中枢において明らかな異常は認められなかった.このことから、Neu3は視覚中枢の発生に必要でないか、あるいは他のメタロプロテアーゼと冗長性があることが示唆された.
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