2008 Fiscal Year Annual Research Report
マウス個体発生過程におけるカスパーゼ活性の生体イメージング
Project/Area Number |
19770192
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 良文 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 助教 (10447443)
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Keywords | 細胞死(アポトーシス) / カスパーゼ / イメージング / 発生生物学 |
Research Abstract |
細胞死は多細胞生物体のからだの維持にとって必要不可避のイベントである。細胞死制御に中心的役割を果たす分子としてカスパーゼがある。近年、生体内においてカスパーゼは細胞死以外の自然免疫、細胞分化、形態形成といった広範な生命現象に関与することが主にショウジョウバエを用いた研究から明らかになってきた。さらに、細胞死シグナルとこれら広範な生命現象を関連づける機構にカスパーゼ自体が関与するという巧妙な仕組みがあることも明らかになってきている。しかしながら、哺乳類生体内の広範な生命現象において、細胞死がどのように制御され個体の恒常性が保たれているのかは、まだあまり明らかになっていない。そこで本研究では、カスパーゼ活性検出プローブSCAT3を全身で発現するトランスジェニックマウス(SCAT3 Tgマウス)を作製し、哺乳類生体内におけるカスパーゼの活性化の時期・領域・様式を調べることで、カスパーゼを介した細胞死シグナル伝達が関与する生命現象を明らかにすることを目指した。試行錯誤の結果、安定して実験に用いることのできるSCAT3Tgマウスを世界で初めて樹立することに成功した。さらに、このマウスを用いて、脳発生過程における細胞死動態を共焦点顕微鏡によってライブイメージングすることにも成功し、死細胞が生細胞集団の中でどのように生じるかを明らかにした。死細胞はすみやかに除去されるためこれまで細胞死動態を生体内で観察することは困難であったが、本研究はこれを可能にしたという点で非常に意義があると考えられる。本研究の成果は、今後、細胞死が多細胞生物体のからだの恒常性維持に果たす具体的な役割の解明に大きな貢献をなすものと期待される。
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