2008 Fiscal Year Annual Research Report
カタユウレイボヤ突然変異体のトランスクリプトーム解析による変態機構の解明
Project/Area Number |
19770193
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
濱田 麻友子 Okinawa Institute of Science and Technology, マリンゲノミックスユニット, 研究員 (40378584)
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Keywords | 発生 / 変態 / 突然変異体 / ホヤ / マイクロアレイ |
Research Abstract |
カタユウレイボヤにおいて変態過程に異常が見られる変異体であるswimming juvenile (sj) 1〜4のうち、本年度はsj4 (trf : tail regression failure)突然変異体では遺伝子レベルで何が起こっているのかを調べるため、マイクロアレイを用いたトランスクリプトーム解析を行った。 通常の変態過程では固着が刺激となり尾部の吸収が起こるが、この変異体は固着しても尾部が吸収されないまま、次のステップ(成体組織の成長などの体幹部の変態)が起こる。このことから、trf突然変異体では尾部吸収の過程に異常があると考えられる。 マイクロアレイを用いてtrf突然変異体の遺伝子発現を正常胚と比べ、発現レベルに違いのある遺伝子を探索した結果、増加・減少ともに約150の候補遺伝子を得た。特に突然変異体で減少した遺伝子に注目し、他の動物との相同遺伝子を検索したところ、神経伝達物質トランスポーター、イオンチャンネル、GPCRシグナル関連遺伝子など神経に発現していることが知られている遺伝子が多く含まれていた。このことから、この変異体では神経系に何らかの異常が起きていると考えられる。trf変異体の表現型は、付着突起を切除した個体で見られる表現型と同じであることが報告されている。このことは尾部吸収が付着突起によって制御されていることを示している。付着突起からはニューロンが走行しており、今回の結果とは辻褄が合い、尾部吸収が付着突起の神経系によって制御されていることが強く示唆される。また、前年度に得たsj1(固着を経ないうちに体幹部の変態が進行する変異体)の発現解析の結果と比較すると、候補遺伝子はほぼ重なっていない。これは複雑な変態過程が複数の独立の経路によって制御されていることを遺伝子レベルで示唆する結果である。
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