2007 Fiscal Year Annual Research Report
Wg発現の再配置による形態進化:付属肢から新奇形質が生じる機構の解明
Project/Area Number |
19770201
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
丹羽 尚 The Institute of Physical and Chemical Research, 形態形成シグナル研究グループ, 研究員 (50373345)
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Keywords | wingless遺伝子 / 形態進化 / 新奇形質 / カゲロウ類 / イシノミ類 / 付属肢 |
Research Abstract |
新奇形質(Evolutionary novelty)の獲得は生物の形態進化における重要なプロセスの一つである.本研究は昆虫類の付属肢から生じる新奇形質(翅およびその関連器官)の形成基盤を比較解析することで,その獲得機構を解明することを目的としている.解析対象とした器官と材料種は次のとおりである.翅(ショウジョウバエ),気管鯉(カゲロウ類),脚基突起(イシノミ類).これらは機能的には異なるがいずれも付属肢由来の器官であり,気管鰓と脚基突起は翅の起原とする仮説が提唱されている.これらに加え,新奇形質獲得基盤の進化的な起原をたどる目的で環形動物ゴカイ類の付属肢も解析対象とした. これまでの解析から,付属肢の背側基部にwingless(wg)遺伝子が発現することが新奇形質創出の基盤と考え,本年度は着目した上記の器官の形成過程におけるwg発現プロセスを解析した.解析には各種において最適となるよう改変したISH法を用いた.その結果,翅,気管鰓,脚基突起のいずれの形成過程には,類似のwg発現パターンの変化を伴うことが明かとなった.すなわち,wgは発生初期には各体節の前後区画境界に線状に発現し,その後背側と腹側に分離する.発生後期に入り付属肢が伸長してくると,その分離した線状の間に再度wgが発現する.この再発現は付属肢の基部背側に位置し,そこから各器官の原基が形成誘導される.この結果は,形態的機能的な相違に関わらず付属肢由来の新奇形質の形成は,共通の分子的基盤によって誘導されることを示唆した.このことを検証するため,翅特異的な分子マーカーであるvestigial (vg)遺伝子を各種から単離し,その発現を解析したところ,いずれの器官原基においても再発現したwgとの共発現が確認された.付属肢の基部背側で再発現するwgがvg発現を誘導することで新奇形質創出の共通基盤が形成されると考えられる.
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Research Products
(5 results)