2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19770214
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
中山 一大 Jichi Medical University, 医学部, 助教 (90433581)
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Keywords | 脂質 / アジア・太平洋地域 / MLXIPL / 遊牧民 / モンゴル人 / 節約遺伝子 |
Research Abstract |
アジア・太平洋地域のモンゴロイド集団の適応放散と生活習慣病関連遺伝子の多様性との関連性を探る目的で、脂質の代謝に関連する遺伝子に着目した解析を行った。第1段階として、日本人約21,000人分のDNA試料を用いて、これまでに血清脂質量との関連が指摘されていた16の遺伝子の単一塩基多型(SNP)と表現型との相関を再検証し、アジア人において血清脂質量の集団内変動に確実に影響を与えている座位を選定した。アジア・太平洋地域の5人類集団2, 311人について、これらの多型の分布調査を行ったところ、血中トリグリセリド量を強く支配するMLXIPL遺伝子のGln241His多型が、集団間で特徴的な頻度差を示すことが明らかになった。低い血中トリグリセリド量と関連するms型対立遺伝子は、モンゴル人において特に高い頻度で存在し、パラオ人では極めて希であった。Gln241Hisの遺伝子型は上記5集団中においても血中トリグリセリド量と強い相関を示した。さらにアフリカ人、ヨーロッパ系アフリカ人、中央・南・東・東南アジア人を含む14集団1,356人でのHis型対立遺伝子の頻度を調査したところ、モンゴル人に加えチベット人・ウイグル人などの遊牧を生業としてきた集団において高頻度で存在することが明らかになった。MLXIPLは肝細胞へのグルコースの流入を感知し、脂肪酸合成経路を亢進する転写因子である。His型では、グルコースを脂肪酸合成に利用する代謝経路が抑制されることによって低い血中トリグリセリド量と結びついていることが予想される。脂質がエネルギー源として優勢な遊牧民においては、グルコースは肝臓での脂肪酸合成に用いられるよりも、脳や赤血球などのエネルギー源として優先的に利用するという点で、His型に適応上の意義があったものと推測される。
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Research Products
(9 results)