2008 Fiscal Year Annual Research Report
グルテン特性の改変に向けたパンコムギ種子貯蔵タンパク質遺伝子の発現機構の解明
Project/Area Number |
19780005
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
川浦 香奈子 Yokohama City University, 木原生物学研究所, 助教 (60381935)
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Keywords | パンコムギ / 種子貯蔵タンパク質 / グルテン / 遺伝子発現 / ゲノム / 多重遺伝子 |
Research Abstract |
パンコムギにおいて種子貯蔵タンパク質α/βグリアジンをコードする遺伝子は多重遺伝子族を構成し、6群染色体短腕のG1i-2座に座乗する。これまで、大量EST解析によりパンコムギの種子登熟期において、α/βグリアジン遺伝子の発現が最大になる時期は画一的ではないことが示された。このことから、α/βグリアジン遺伝子の個別の発現制御システムの解明を目的とし、遺伝子発現パターンとゲノム構造の関連を調べるため、α/βグリアジン遺伝子を含むBACクローンを選出し、構造を解析した。 α/βグリアジン遺伝子のゲノム特異的なプライマーを用いたPCRによりBACクローンを選出した。これらのBACクローンを用いてサザンプロット解析を行い、BACクローン上に存在するα/βグリアジン遺伝子の数を推定した。その結果、G1i-A2座は6Ni-B2座およびG1i-D2座より染色体領域に疎らに遺伝子が存在することが推測された。これらの中から、Aゲノム、BゲノムおよびDゲノムそれぞれの約200kbの塩基配列を決定した。各遺伝子の間隔は、数kbから100kb以上であり不均等であった。遺伝子と遺伝子の間にはα/βグリアジン遺伝子以外の機能的遺伝子は見られず、レトロトランスポゾンやトランスポゾンが多く存在していた。 次に、プロモーター領域において報告されている種子貯蔵タンパク質のシス配列が存在するかを確かめるため、遺伝子の翻訳開始点上流1kbの範囲のモチーフを検索した。しかしながら、モチーフの存在や数と遺伝子発現パターンとの関連は見出されなかった。以上から、特徴的な発現パターンを示した遺伝子が座乗するGli-A2座は染色体上の比較的広い領域に及ぶことが示唆されたが、各々の遺伝子発現パターンと既知のプロモーター配列との関連は明らかにならなかった。α/βグリアジン遺伝子は、ゲノム中でコピー数が増加する間に発現調節機構も複雑に進化したことが示唆された。
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