2008 Fiscal Year Annual Research Report
水田における植物相維持・再生に向けた現存植生および埋土種子集団の解明
Project/Area Number |
19780030
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 晋 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (30450282)
|
Keywords | 水田雑草 / 自然立地 / 圃場整備 / 茨城県 / 鬼怒川・小貝川 / 谷底低地 / 旧河道 / 耕作放棄水田 |
Research Abstract |
本年度の主要な研究成果は次の2点である. まず, 水田における水田植物の現存植生分布を把握し, その空間分布に影響を与える要因を解明した. 調査は, 茨城県南部の小貝川・鬼怒川の沖積低地とその東に隣接する筑波稲敷台地の小規模な谷底に位置する水田を対象に行った. その結果, 水田が存在する地形単位および整備の程度に応じて, 水田の稲刈り後に成立する植生の種組成は異なることが明らかとなった. 地形単位に関しては, 旧河道や小規模な谷底低地に立地する水田において, 他の立地には出現しない希少種の湿性植物が確認された. したがって, これらの立地では, 地域の植物相保全を図るうえで注目すべき立地であることがわかった.圃場整備程度も成立植生に影響を及ぼしたが, その程度は自然立地によって異なった. 旧河道の水田においては, いかなる圃場整備が進行しても希少種が姿を消す傾向がみられた一方, 小規模な谷底の水田では, 圃場整備に対する希少種の消失程度が明確でなかった. 水田における植物相の保全にあたっては, 立地ごとにきめ細かい圃場整備程度を考慮する必要があることがわかった. つぎに, 放棄水田において水田耕作を再開した場合に, 水田耕作に依存する植物相が再生される可能性を検証するため, 耕作停止後の年数が異なる放棄水田で, 表層土壌に含まれる埋土種子集団を確認した. その結果, 放棄後20年を境に, 放棄年数が長い区画では耕作水田特有の湿生種が姿を消す傾向がみられた. 水田に生育する湿生の希少種を, 耕作放棄水田を利用して再生するためには, 放棄年数に配慮して事業を実施する必要が高いことが明らかとなった.
|