2009 Fiscal Year Annual Research Report
性フェロモン剤(交信攪乱剤)に対する抵抗性発現メカニズムの解明
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19780044
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
田端 純 National Institute for Agro-Environmental Sciences, 生物多様性研究領域, 研究員 (20391211)
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Keywords | 総合的害虫管理(IPM) / 性フェロモン剤(交信撹乱剤) / 抵抗性害虫 / 応用昆虫学 / 昆虫行動学 / 化学生態学 |
Research Abstract |
性フェロモンを人工的に合成・散布することで、雌雄間の情報交信を撹乱し標的害虫の増殖を抑える交信撹乱剤は、従来の有機合成殺虫剤の代替となる安全性の高い害虫管理資材として期待され、すでに実用に至っている。ところが、1996年頃から、静岡県の茶園のハマキガ類で、交信撹乱剤に対する抵抗性が認められた。今後の交信撹乱剤のリスク管理に向け、本事例における抵抗性発現メカニズムを解明する必要がある。 研究代表者らは、交信撹乱剤に対する抵抗性を発達させたハマキガ(チャノコカクモンハマキ)を採集し、実験室内でさらなる選抜・飼育を行うことで、極めて強い抵抗性を示す系統(以下、抵抗性系統とする)を確立した。性フェロモン成分や交信撹乱剤に対する反応行動を観察したところ、交尾行動の誘起に不可欠な性フェロモン成分(Z-11-テトラデセニルアセテート)を含まない組成の誘引源に対しても、抵抗性系統では72%のオス個体が反応した。 このような特異な反応行動を示すオスのハマキガにおける、性フェロモン成分に対する触角の電気生理学的応答を調査した。触角電図法(EAG法)によってZ11に対する触角全体の神経電位を定量的に記録したところ、抵抗性系統と非抵抗性系統の間で有意な差は認められなかった。しかし、触角を構成する毛状感覚子レベルでは、少なくとも2つの性フェロモン成分受容細胞が存在することが明らかとなった。これらの受容細胞レベル、あるいは中枢神経レベルでの性フェロモン成分バランスの認識の差異によって、抵抗性系統に特異的な行動が生じており、交信撹乱剤に対する抵抗性の原因となっている可能性が示唆された。 なお、現在市販されている交信撹乱剤は、このような抵抗性系統に対しても十分な効果が期待できるように改良されたものである。
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