2007 Fiscal Year Annual Research Report
共生細菌ウォルバキアが鱗翅目昆虫の性決定に与える影響の解析
Project/Area Number |
19780046
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
陰山 大輔 National Institute of Agrobiological Sciences, 昆虫科学研究領域昆虫・微生物間相互作用研究ユニット, 任期付研究員 (60401212)
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Keywords | 性転換 / 共生微生物 / Wolbachia / キチョウ / 昆虫 / dsx / 性決定 / 移植 |
Research Abstract |
(1)キチョウではWolbachiaにより遺伝的オスがメスに性転換させられる。そこで性転換メカニズムを解明するたあのモデル系の確立を目的として、キチョウ由来のメス化Wolbachiaをカイコ培養細胞や生きたカイコに移植した。カイコ培養細胞ヘキチョウ由来のWolbachiaを感染させることに成功し、安定して維持できた。また、Wolbachiaは、生きたカイコの体細胞では、本来の宿主であるキチョウにおける密度と同程度まで増殖した。ところが、生殖細胞への感染には失敗し、次世代にも全く伝わらないことが判明した。その原因として、Wolbachia側の宿主特異性、あるいはカイコ側(生殖細胞)の免疫特性、異物排除機構などの存在が疑われた。 (2)キチョウの性決定遺伝子カスケードの最下流に位置するとされるdoublesex(dsx)遺伝子が、雌雄において異なったパターンでスプライスされることを明らかにした。次にWolbachiaによってメス化されたキチョウのdsx遺伝子のスプライシングパターンを調べたところ、メス型であることがわかった。このことは、メス化されたキチョウの性決定遺伝子カスケードにおいて、dsx遺伝子よりも上流でオスからメスへの転換が行われていることを示している。 (3)カイコ培養細胞ではWolbachiaによって、メス化が起こるのかどうかを調べるため、オス由来の培養細胞とメス由来の培養細胞の両方にキチョウ由来のメス化Wolbachiaを感染させ、dsx遺伝子のスプライシングパターンを調査した。オス由来の細胞のdsx遺伝子のスプライシングパターンがメス型に転換されているという期待に反して、結果は明確にオス型を示していた。培養細胞では、このような高度な生命現象を再現できないのではないかと考えている。
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