2008 Fiscal Year Annual Research Report
スフィンゴモナス属細菌のポリエチレングリコール分解メガプラスミドの環境中挙動
Project/Area Number |
19780060
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
谷 明生 Okayama University, 資源生物科学研究所, 助教 (00335621)
|
Keywords | ポリエチレングリコール / Sphingomonas属細菌 / プラスミド |
Research Abstract |
Sphingomonas属細菌は一般に様々な環境汚染物質の分解菌として認識されている。分解に関わる遺伝子は主に巨大なプラスミドにコードされており、異なる細菌の間を転移することにより、分解に関わる重要な遺伝子を寄せ集めていると考えられている。しかしながら環境中でのそれらのプラスミドの動態については不明な点が多い。そこで、Sphingomonas属細菌の中でもポリエチレングリコール(PEG)を分解できるSphingopyxis macrogoltabida 103株に注目し、本菌が持つPEG分解遺伝子がコードされている巨大プラスミドが、環境中で他のどのような菌に伝播しうるかを解析することを第一の目的とする。第二の目的として、PEGの分解に関わる遺伝子がまだ不完全であるため、PEGの完全分解に必要な遺伝子を同定し、酵素化学的に明らかにすることも目的とした。第三の目的として、本菌に小さいプラスミドを見いだしたので、その構造を明らかにすると共に、大腸菌とのシャトルベクターを構築することを目的とした。 巨大プラスミドの環境中での伝播を解析するに当たり、巨大プラスミドをラベルする必要があった。緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子などの相同組み替えによる導入を様々に試みたが、最終的にはプラスミドをGFPラベルすることができなかった。おそらく相同組み換え効率が極端に低いことが原因であると考えられ、プラスミドをGFP遺伝子ラベルするためには相同組み換え効率の改善を行う必要があった。 PEGの分解に関わる遺伝子としてpegBCDAERというオペロン構造をすでに明らかにしていた。本研究ではその下流にグルタチオンS転移酵素(GST)およびFAD含有酸化還元酵素の遺伝子を見いだした。前者タンパク質はPEG代謝中間体であるPEG-カルボン酸CoAに結合すること、後者タンパク質は同じく中間体であるPEGカルボン酸を切断し、グリオキシル酸と1ユニット短いPEGを生成することを明らかにした。これにより、PEGの分解は完全なサイクルとなり、今まで不明であったPEGの切断酵素を同定することによりPEGの完全分解に関わる遺伝子を全て明らかにした。 103株に見いだした小さいプラスミドをクローニングし、全塩基配列を決定した。本プラスミドにはそれぞれ103株での複製に必要であることを明らかにした、repA遺伝子とresolvase遺伝子しかコードしない潜在的プラスミドであると考えられる。大腸菌とのシャトルベクターを構築したので、今後第一の目的である巨大プラスミドのラベルのために、一次的な遺伝子キャリアとして103株に導入するという応用法が考えられる。
|
Research Products
(2 results)