2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19780074
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
桝田 哲哉 Kyoto University, 地球環境学堂, 助教 (80311744)
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Keywords | 甘味 / ソーマチン / 変異体 / Pichia pastoris / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
甘味タンパク質ソーマチンの甘味発現部位を明らかにするため部位特異的変異体の作製を行った。ソーマチンIの遺伝子を新たに取得し、酵母由来の分泌配列を用いて酵母Pichia pastorisで発現させた。その結果、組換えソーマチンは植物ソーマチンと同様に甘味を呈したが、N末端のプロセッシングがヘテロであり、N末端に余分に数残基のアミノ酸が付加していた。そこで均一な組換え体を得るため、酵母の分泌配列をソーマチン自身が有する分泌配列に変え発現を試みた。その結果、ソーマチンの分泌量とともにN末端のプロセッシングの問題も改善でき、均一なソーマチンを取得できた。この発現系を用いてソーマチンの塩基性アミノ酸残基のアラニン置換を行った。官能検査により甘味に与える影響を検討したところ、クレフト面に存在する塩基性アミノ酸残基変異体の甘味閾値は上昇したが、その中でもR82A, K67Aの甘味閾値の上昇は顕著であった。これまでソーマチンの甘味発現にはアルギニン残基は寄与しないと報告されていたが、本研究により初めてアルギニン残基の重要性を明らかにした。また、先の化学修飾実験において重要性が指摘されていたK106については、変異体K106Aが甘味閾値にあまり影響を与えなかったことから、かさ高いピリドキサールリン酸の官能基が近傍に存在するR82の側鎖に影響を与えることにより、甘味を消失したものと考えられた。R82AならびにK67Aの結晶化を行い、構造の詳細を検討した。変異体R82Aについて分解能1.1Aのデーターを取得し、精密化を行ったところ、R82Aの1残基変異により、R79の側鎖、K67の主鎖の構造に影響を与えることが明らかになった。これら一連の構造変化によりクレフト面における変異体R82Aの分子表面の静電的環境が著しく変化していた。以上の結果から、R82、K67で形成される塩基性領域がソーマチンの甘味発現に重要な役割を果たすと考えられた。
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