2007 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子改変マウスを用いた細胞内プロテアーゼ・カルパイン系の解析
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19780080
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高野 二郎 The Institute of Physical and Chemical Research, 神経蛋白制御研究チーム, 研究員 (60415213)
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Keywords | カルパイン / カルシウム / 細胞死 / カスパー / ノックアウトマウス / 細胞内タンパク質分解 / プロテオーム解析 / 神経変性疾患 |
Research Abstract |
内容 細胞内プロテアーゼである「カルパイン」の生体内における機能解析のため、遺伝子欠損マウスを作成すると、受精14日後に心血管系の異常により死亡する。更に詳細な解析を行うと、細胞死を誘導するプロテアーゼとして知られる「カスパーゼ」が過剰活性化を伴う細胞死が起きていることが観察された。また、細胞死が起きる組織特異的にカルパインの発現欠損を行うと期待された通りに胎生致死となることから、欠損マウスの死因となる組織異常を特定した。また、ヒト培養細胞を用いて、カルパイン阻害が細胞死を引き起こし、カスパーゼ阻害剤により細胞死を抑制することができ、更に詳細な分子機序を解析している。別の実験として、脳内におけるカルパインの基質を同定するため、欠損マウスと野生型マウス間のプロテオーム解析を行っており、今年度では基質の候補を絞りこみを行った。 意義 カルパインの過剰な活性化は細胞死を促進することがしられていたが、本研究によりカルパインの適度な活性が個体発生において重要な役割をしていることを示し、生体内におけるカルパインの生理的な役割を解明した。また、基質の同定に関しては、カルパインを介する細胞内シグナル伝達系が明らかになることで、その機能の解明につながるものと思われる。 重要性 これまで詳細な解析が行われていなかった生体内でのカルパインの機能を明らかにした。また、カルパインはアルツハイマー病や心筋梗塞時における神経細胞死を加速する因子として認められており、阻害剤の投与により細胞死を食い止める試みが行われている。本研究は、カルパインの持続的な阻害が悪影響を及ぼす可能性を示唆している。これまでに多くのカルパインに関する研究が行われているが、多くが特異性の低い阻害剤を用いている。本研究では、遺伝子改変マウスを用いることで、これまでに得られている知見を再評価し、新たな発見につながるものと思われる。
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