2007 Fiscal Year Annual Research Report
微細構造学的解析によるスギの雄性不稔発現機構の解明
Project/Area Number |
19780112
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
細尾 佳宏 Shinshu University, ファイバーナノテク国際若手研究者育成拠点, 助教 (80377184)
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Keywords | スギ / 雄花 / 花粉の分化 / 雄性不稔 / 電子顕微鏡 / 小胞子 |
Research Abstract |
スギ花粉症問題が全国で深刻化するなか,花粉を生産しない雄性不稔スギが注目されつつある。スギの花粉形成過程には未だ不明な点が多く,雄性不稔スギにおいて花粉の発達異常が起きる過程の大部分も不明である。本研究課題は,近年新潟県で発見された雄性不稔スギの雄性不稔発現機構を解明することを目的としている。 花粉の分化が開始される9月から花粉飛散前の翌年2月まで約1週間ごとに正常スギと雄性不稔スギから雄花の試料を採取し,花粉の分化過程を光学顕微鏡で観察した。正常スギの雄花では,均一な大きさの小胞子からなる四分子が形成された。一方,雄性不稔スギでは大きさが不均一な小胞子集団が形成された。正常スギでは,小胞子が均一な大きさの花粉粒に成熟し,雄性不稔スギでも小胞子が成熟花粉粒まで分化した。正常雄花からは花粉飛散期に花粉粒が放出されたが,不稔雄花では花粉嚢中に花粉粒が残留し続け,飛散しなかった。 雄花を電界放出系走査電子顕微鏡(FE-SEM)で観察するため,エタノールで脱水し,t-ブタノール凍結乾燥を行った。乾燥させた雄花試料をオスミウムコーティングし,その上に白金-パラジウムでコーティングを行った後,観察を行った。その結果,花粉や花粉嚢の微細構造を大きな変形や収縮を引き起こすことなく観察することができた。不稔雄花中の花粉粒は,大きさは異なるもののそれ以外は正常雄花中の花粉粒と大きな違いは見られなかった。 以上の結果から,雄性不稔の発現につながる花粉分化課程の常は,小胞子の成熟段階よりは減数分裂のような小胞子形段階で起こることが示唆された。また,花粉粒をFE-SEMを用いて高倍率,高分解能で観察する手法を確立したことで,今後の研究に有用な研究ツールとなることが期待される。
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