2008 Fiscal Year Annual Research Report
微細構造学的解析によるスギの雄性不稔発現機構の解明
Project/Area Number |
19780112
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
細尾 佳宏 Shinshu University, ファイバーナノテク国際若手研究者育成拠点, 助教 (80377184)
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Keywords | スギ / 雄性不稔 / 花粉 / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
スギ花粉症問題が全国で深刻化するなか、花粉を生産しない雄性不稔スギが注目されつつある。本研究課題は、近年新潟県で発見された雄性不稔スギの雄性不稔発現機構を解明することを目的としている。本年度は主に以下の点について研究を行った。(1)花粉の形成過程を光学顕微鏡でより明確に観察し、さらに透過型電子顕微鏡で観察するためには、雄花を樹脂に包埋し切片を作製することが必要である。そのため、雄花の最適な樹脂包埋条件を検討した。そして、低粘性で浸透性が高い樹脂を用いることにより、良好な結果が得られることが分かった。(2)新潟県で発見された雄性不稔スギ1個体について、雄性不稔性の機構を光学顕微鏡と蛍光顕微鏡により観察した。花粉の分化は四分子までは正常に進行したが、四分子から小胞子は分離しなかった。四分子の周りには無定形物質が観察され、小胞子同士を接着するか四分子を覆うことにより分離を妨げていると推定された。四分子の形態は花粉飛散期まで維持され、最終的には退化した。これらの結果から、この雄性不稔スギの不稔性を引き起こす機構は以前に報告された他の不稔スギと異なることが示唆された。(3)昨年度の観察で、均一な大きさの正常花粉と異なり、大きさが不均一な花粉が観察された雄性不稔スギについて、さらに観察を行った。成熟雄花の花粉嚢を電解放出形走査型電子顕微鏡で観察し、花粉表面の微細構造について解析した。小さい花粉、大きい花粉ともに発芽帯とbody zoneが確認され、発芽帯の中央にかぎ状突起が観察された。body zoneには顆粒状のオービクルが多数付着していた。
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