2009 Fiscal Year Annual Research Report
微細構造学的解析によるスギの雄性不稔発現機構の解明
Project/Area Number |
19780112
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
細尾 佳宏 Shinshu University, ファイバーナノテク国際若手研究者育成拠点, 助教 (80377184)
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Keywords | 雄性不稔 / 花粉 / 雄花 / 小胞子 |
Research Abstract |
スギ花粉症が社会的問題となっているなかで、花粉が生産されない雄性不稔スギが花粉飛散量を低減する対策の一つとして最近注目されている。本研究では、スギの花粉形成と雄性不稔スギにおける不稔性の機構を解明するために研究を行った。雄性不稔スギ新大8号の花粉崩壊過程を光学顕微鏡し、花粉の分化は小胞子形成期までは正常に行われるが、花粉有糸分裂に異常が生じ、最終的に小胞子は崩壊することを明らかにした。小胞子を電子顕微鏡で観察すると、表面に無定形物質が観察され、正常花粉で見られるオービクルはほとんど観察されなかった。新大8号では、タペート組織の異常による不完全な花粉壁形成や、花粉有糸分裂の欠陥が雄性不稔性に関わっていることが明らかになった。さらに、別の雄性不稔スギについて不稔性の細胞学的な機構を解析した。減数分裂は正常に進行し均一な大きさの小胞子が形成されたが、その後小胞子中の核が断片化し始めた。正常花粉の成熟時期になると、小胞子が収縮してつぶれ、多数の小胞子が癒着していた。タペート組織の一部は花粉飛散期まで残り、収縮した小胞子は無定形物質で覆われていた。この個体では、タペート組織の分解不良や少胞子中に生じる異常が雄性不稔性に関係していると考えられた。また、スギからカリウムイオン膜輸送体をコードする遺伝子の単離を試みた。そして、TPKファミリーのカリウムチャネルと相同性が高い遺伝子のcDNAを取得した。この遺伝子は分化中の雄花で発現し、遺伝子産物は内向き整流性のカリウム輸送活性を持つことが分かった。カリウムイオンは細胞の増殖・成長、恒常性の維持、浸透圧の調節など植物生理の様々な局面で中心的な役割を果たしている。単離したスギTPK遺伝子は、花粉形成渦程に関係している可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)