2009 Fiscal Year Annual Research Report
亜高山帯針葉樹林において落葉分解に関わる大型菌類の機能的多様性
Project/Area Number |
19780114
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大園 享司 Kyoto University, 生態学研究センター, 准教授 (90335307)
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Keywords | 森林 / 生態 / 落葉分解 / 菌類 / 生物多様性 / 亜高山帯針葉樹林 / 子実体 / 季節変化 |
Research Abstract |
亜高山帯林土壌において落葉分解に関わる大型菌類の現存量、種多様性とその分解機能の多様性を明らかにし、土壌有機物の集積・分解に果たす大型菌類の役割を評価した。岐阜県と長野県の境界部に位置する木曽御岳山の標高2050メートルにある亜高山帯針葉樹林を調査地とした。研究期間3年間の3年目にあたる今年度には、昨年度分離した大型菌類の24菌株を用いて、落葉分解能力を調べるための培養系での接種試験を実施した。ガス滅菌したダケカンバ落葉に菌株を接種し、20℃で12週間培養後の落葉の重量変化を求めた。その結果、24菌株による落葉の重量減少率は0.0~54.5%(初期重量に対する%)となった。もっとも分解力が高かったのはホウライタケ属の1種Marasmius androsaceusであった。野外において子実体が高頻度で出現したオウバイタケ、ナメアシタケ(いずれもクヌギタケ属)も比較的分解力が高く再重量減少率は18.4~32.7%であった。その一方で、Mycena clavicularis(クヌギタケ属)、Collybia cookie(モリノカレバタケ属)といった種の菌株は分解力が低かった。初期重量の10%以上の重量減少を引き起こした15菌株はいずれもリグニン分解力を示し、リグニンの重量減少率は初期重量の17.4~70.6%に達した。これら菌株ではリグニンの選択的分解の指標であるL/W(落葉の重量減少率に対するリグニンの重量減少率の割合)が1.3~2.0と高く、リグニンを比較的選択的に分解していた。以上から、亜高山帯針葉樹林に生息する大型菌類の多くは活発なリグニン分解力を有することが示された。
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