2009 Fiscal Year Annual Research Report
立地選好性の違いによる地下部配分比と細根形態からみた森林樹木の養分獲得戦略
Project/Area Number |
19780118
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菱 拓雄 Kyushu University, 農学研究院, 助教 (50423009)
|
Keywords | 細根 / 土壌環境 / 菌根菌 / 土壌動物 / 物質循環 / 形態的可塑性 |
Research Abstract |
本研究では、森林生熊系において立地環境と樹木細根の形態的可塑性を検討することを目的としていた.まず、樹木細根系の形態的な特徴を個々の細根と構造的な配置から明らかにし、生理学、解剖学、生態系生態学的意義から統合的に解釈する考え方を総説としてまとめ、細根系の形態的特性の意義付けを行った.本年度は林齢の異なるスギ人工林を例に、森林生態系の林分レベルでの炭素制限と養分不足に対する細根系の形態形成と菌根化率の反応に関する解析を行った。高齢スギ林分では、養分不足の状況が、細根バイオマスへの投資の低下をもたらし、さらなる養分の不足を招いている。こうした炭素不足と養分吸収器官への低下に対して、樹木は細根クラスターサイズ、根端長、分岐頻度、木部構造、根端における菌根化率など、多岐に渡る形態的な変化によって対応していた。これらは土壌の硝化速度だけでなく、細根あたりの生態系生産量などとも関係しており、樹木の加齢による養分吸収の特微は、量的な配分だけでなく、細根の形も重要な意味を持っていることを明らかにできた。 これまで細根系に関する研究は環境に対する量的反応だけが着目されていたが、土壌環境や土壌生物、森林の発逹段階によって解剖学的、構造的な可塑性をもち、それらは量的な反応とあわせて土壌環境に対する樹木の養分獲得戦略をより詳しく記述することができることが本年度研究とあわせてこれまでの一連の研究によって明らかになった.
|