2007 Fiscal Year Annual Research Report
貧栄養条件下に成立する脆弱な熱帯林における人為撹乱後の植生回復能力の評価
Project/Area Number |
19780125
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
宮本 和樹 Forestry and Forest Products Research Institute, 四国支所, 研究員 (60353877)
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Keywords | ヒース林 / ケランガス / ポドゾル / Dacrydium pectinatum / Hopea pentanervia / ボルネオ / 実生 / 空間分布 |
Research Abstract |
ボルネオ島に分布する熱帯ヒース林(ケランガス林)は、酸性化した熱帯ポドゾル上に成立し、一旦伐採や火入れなどの人為撹乱を受けると植生回復が難しく、特に脆弱な森林生態系といわれている。熱帯ヒース林における、撹乱からの植生回復プロセスに対する実生更新の寄与を明らかにするため、マレーシア・サバ州に分布する熱帯ヒース林において、優占種3種(マキ科Dacrydium pectinatum、フトモモ科Tristaniopsis sp.、フタバガキ科Hopea pentanervia)の実生の分布と微地形等の環境要因との関係を調査した。調査地として、種組成や森林構造が異なる2つのタイプの熱帯ヒース林(Large crownタイプ、以下LCとSmall crownタイプ、以下SC)が同所的に分布する場所を選定し、2つのタイプを横断するようにライントランセクトを設置した。3種の実生はそれぞれの親木と同所的に分布する傾向を示す一方、Dacrydiumの実生はTristaniopsisの親木とも同所的に分布し、Hopeaの実生はTristaniopsisの親木とは排他的に分布していた。LCとSCとの境界部は比較的明瞭で、両者の中間的特性を示す移行帯部分はほとんど見られなかった。実生の出現頻度と環境要因との関係をみると、SCの優占種であるDacrydiumとTristaniopsisは局所的な土地の高さに、LCとSCの共通種であるHopeaは土壌の腐食層の厚さにそれぞれ影響を受けていることが示唆された。葉のCN比はDacrydiumとTristaniopsisで高く、Hopeaで低い傾向がみられ、SCの優占種であるDacrydiumとTristaniopsisが、窒素利用に関してより制限された環境に適応していることが推察された。
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